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ドイツの旅、フランクフルトから首都ベルリンへ

高速列車ICE フランクフルトから首都ベルリンへ

フランクフルト中央駅に到着したベルリン東駅行きICE

 近年、ドイツ鉄道(DBDeutsche BahnDie Bahn)の旅の主役は様変わりして、すっかり高速列車ICEのお世話になることが主流となってしまった。それで、今回も前回同様、ICEに乗ることになる。以下、2009年夏の思い出だ。

車内で配布していた列車時刻表の表紙
列車時刻表の一部

 ICEは、ドイツ国内の主要路線を縦横無尽に走り回っているが、どの列車もかなりの長距離を駆け抜ける。今回はフランクフルトから首都ベルリンへ向かうことになり、これだけでも4時間はたっぷりかかるかなりのロングランなのだが、列車の始発駅はフランクフルトではない。時刻表を仔細にチェックすると、南のミュンヘン中央駅を早朝628分に出発している(2009年夏ダイヤ)。そして、アウクスブルク、ウルム、シュトゥットガルト、マンハイムを経て、1008分にフランクフルト中央駅に到着。ここまででも4時間近い旅なのだ。

 大きなドームに覆われたフランクフルト中央駅のホームにベルリン東駅行きのICEが静かに滑り込んできた。いくら長距離列車とはいえ、全行程を乗り通す人は多くなく、フランクフルト中央駅ではかなりの乗客が下車する。私はユーレイルパスを持っていたのだが、ICEを利用するにあたっては、座席指定は義務付けられてはいなかった。それで、ふらりと好きな時間の列車に乗って、空いている席に座ることにしている。列車が混んでいれば、座れるかどうか気を揉むところだが、この当時は、そうした心配は皆無だった。今回も、大勢の乗客がフランクフルト中央駅で下車したこともあり、席はより取り見取りである。もちろん、ユーレイルパス所持なので1等車に乗る。

市庁舎前のグリム兄弟像

 列車は、5分停車後の1013分、進行方向を逆にしてフランクフルト中央駅を発車する。広大な駅に隣接した車両基地の脇を通り西に向かうものの、大きく反時計回りに半周して市街地を抜け、東へ歩を進める。あっという間に緑豊かな森の中を走ることになるけれど、15分ほどでハーナウ中央駅に停車。この駅に停まるICEは多くない。ハーナウは、グリム童話ゆかりの地を結ぶメルヘン街道の起点となる都市で、グリム兄弟が生まれたところ。駅からやや離れてはいるが、市内のマルクト広場には2人の銅像が立っている。

 ハーナウの次は、40分でフルダに停まり、ここより高速新線(NBSNeubaustrecke)に入る。DBは在来線と高速新線(新幹線専用軌道)の線路幅は同じなので、ICEは在来線を走ったり、高速新線を走ったりと変幻自在にルートを変えることができるのだ。

高速新線のトンネル入口
時速250kmの表示
時速250㎞の車窓

 さすがに高速新線に入ると、これまでとは一線を画するようにスピードをぐんぐん上げる。車内の速度計を見ていると、時速160㎞からみるみるうちに200㎞を超え、すぐに時速250㎞に達した。ドイツでも高速新線はトンネルが多いが、円筒を斜めに切ったようなトンネルの出入口はドイツの高速新線ではお馴染みのもの。風圧などの影響を考慮してこの形にしたそうだ。在来線とは打って変わって丘陵地帯も掘割の中を走ったりするので車窓がよいとは言えない。

 30分でカッセル・ヴィルヘルムスへ―エ駅に到着。カッセルの中央駅は行き止まりの駅なので、所要時間を短縮するため、街はずれにICEが停車する新駅を造ったのだ。新横浜駅や新大阪駅と似ている。

ガラス張りのドアから見た車内
ヒルデスハイム~ブラウンシュヴァイク間の車窓

 さらに高速新線を驀進し、有名な大学都市ゲッティンゲンに停まり、さらに北上、ハノーファーの手前でようやく高速新線を降りて、大きく東に向きを変えるとヒルデスハイム中央駅に到着する。ここからしばらくは在来線をのんびりと走る。ブラウンシュヴァイク中央駅に停まった後は、ドイツが誇るフォルクスワ―ゲンの本社のあるヴォルフスブルクを通過、その後、再び高速新線に乗り入れる。ここから先は、大平原の真っただ中を気持ちよいくらいのスピードで疾走していく。お昼時でお腹が空いたので食堂車へ向かう。結構混んでいたけれど、何とか座れたのでランチを食べた。食事の写真を撮らなかったので、何を食べたのかは忘れてしまい思い出せない。

ICEの食堂車

 1時間ほどノンストップの後、首都ベルリンの郊外にあたるベルリン・シュパンダウ駅に停車する。東西ドイツが統一された1990年に当時の西側からベルリンに向かったときは、2時間半くらいとずいぶん時間がかかったことを覚えているが、こんなにあっけなくベルリンに到着するとは驚きだ。

 ここからは、首都の近郊区間になり、通勤電車Sバーンが並走する。電車と言っても地下鉄丸ノ内線などと同じ第三軌条集電でパンタグラフや架線のない線路なので、ちょっと不思議な光景だ。意外に緑の多い首都圏を進み、かつては西ベルリンのターミナルだったツォー(動物園)駅は通過。高架線上を進み、2006年に開業したベルリン中央駅に到着する。

ベルリン東駅に到着

 歴史ある重厚なターミナル駅とは一線を画するようなモダンな造りは逆に新鮮だ。とは言え、ここで降りてしまうのも鉄道ファンとしては中途半端感が拭えないので、まずは最後まで乗り通すべく終点のベルリン東駅(Berlin Ostbahnhof)へ。中央駅でかなりの人が下車した後なので、空いた車内からベルリンの中心部の車窓を眺めながら10分ほど過ごして、ほぼ定刻の1430分に到着。下車すると、おもむろにSバーンで中央駅へ折り返すという酔狂なことをしてしまった。

東駅からはSバーンで中央駅へ戻る
ベルリン中央駅の外観

 さて、中央駅は、ほぼ東西に走る高架のホーム以外にも南北に走る地下ホームがあり、立体的な構造には目を見張るものがある。行き止まりのターミナルが主流のヨーロッパにあって列車が通り抜ける駅は画期的でもある。これが新しいドイツの首都の玄関口なのだと思うと感慨もひとしおだった。

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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