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「杉田(水脈)さんは素晴らしい!」と安倍晋三は語った

適菜収【隔週連載】だから何度も言ったのに 第30回


閣僚の辞任ドミノが止まらない。27日、性犯罪をめぐる発言や性的マイノリティーをめぐる差別的な表現で批判を受け続けていた総務政務官・杉田水脈がついに辞表を提出。岸田内閣の支持率も約32%と最低水準を更新中だ。ところがどっこい、岸田の顔の面は厚くなるばかり。この先いったいどんな地獄へ国民を連れて行こうとしているのか。最新刊『日本をダメにした B層の研究を刊行し、売国政治屋をのさばらせた近代大衆社会の末路を鋭く分析した適菜収氏の「だから何度も言ったのに」連載第30回。


杉田水脈

 

差別主義者を比例上位に押し込んだのは誰だったか

 

 ジャーナリストの櫻井よしこは、ネット番組「言論テレビ」に出演した際、杉田水脈についてこう語っている。《安倍(晋三)さんがやっぱりね、「杉田さんは素晴らしい!」って言うので、萩生田(光一)さんが一生懸命になってお誘いして、もうちゃんと話をして、(杉田は)「自民党、このしっかりした政党から出たい」と》

 カルトはカルトを呼ぶ。杉田という最底辺のネトウヨレベルの人物を比例上位に押し込んだバカが、78カ月も総理大臣をやっていたのだから、国が傾くのも当然。

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 杉田は保育所の待機児童問題に関し、産経新聞のコラムでデマを流している。「事実として確認できず、不用意な発言だった」と杉田は国会で認めたが、「事実として確認」できないことを書く国会議員とそれを掲載する産経新聞。メディアの腐敗が国家の衰退に拍車をかけた。

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 閣僚の辞任ドミノが発生し、政権支持率は下落の一途、政権交代の声が上がる中、岸田は党内の会合で笑顔で挨拶し、「皆さんのおかげで年を越せそうだ」だって。空気を読めないのかわざとなのか。

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 石川県漁業協同組合長らが競りで500万円の値がつくズワイガニと400万円のブリを持参して首相官邸を訪問。岸田は目を輝かし「食べていい?食べていい?」と関係者に尋ね、試食して、「すごいお金持ちになった気分。甘み、うまみ、ちょっとやっぱり違いますね」と感想を述べたとのこと。カネがなくて年を越せない国民もいるだろうに、やっぱりわざとか。日本語が大の苦手で、なにを食べても「ジューシー」という感想しか出てこなかった安倍よりは語彙力があるようだが。

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 ついでに安倍の発言を振り返っておく。桃を食べたときの感想は「甘くてジューシーだ」。トマトを食べたときの感想は「とても美味しいですね、ジューシーで」。メロンを食べたときの感想は「甘くてとてもジューシーだ」。種なしブドウのシャインマスカットを食べたときの感想は「ジューシーですね。おいしい」。柿を食べたときの感想は「ジューシーで」。果物だけではない。葉山牛のローストビーフとビーフジャーキーを食べると「非常にジューシーだ」。語彙が極度に少ないということは、世界の捉え方も極めて表層的だったのではないか。

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 岸田は東京都内で講演、ロシアのウクライナ侵攻後に麻生太郎から「首相には平時の宰相と有事の宰相がいる。あなたは間違いなく有事の宰相だ」と言葉をかけられたと明らかにした。また、防衛問題について「先送りできない問題に、真正面から愚直に取り組み、ひとつひとつ答えを出していく。こうした挑戦をおこなっていくことが、私の歴史的な役割であると覚悟をしている」と発言。なんだか高揚しているようだが、「有事の宰相」ではなくて、「有事を引き起こす宰相」だろ。

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 一連の安倍に関する疑惑など、「先送りできない問題」を先送りにしてきた結果が現在のわが国の状況である。最近、この手の説教泥棒のような人間が多い。以前、新型コロナの感染拡大の対応が後手後手にまわったことを批判された大阪の吉村洋文は「感染拡大の明らかな兆しが見えているので先手を打つべき」とドヤ顔で発言。結局、恥知らずは最強である。

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 1222日、渋谷区の将棋会館で行われた第81期名人戦・B1組順位戦で、後手番の千田翔太七段が先手番と勘違いして初手を指し、1手で反則負けとなった。

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  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

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第一章 内田樹と『日本辺境論』

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

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第二章 自立を拒絶する人たち

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

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第三章 「正義」を笠に着る人たち

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

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第四章 陰謀論に走る人たち 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

✳︎ 

第五章 無責任な人たち

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

✳︎ 

第六章 恥知らずな人たち

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

✳︎ 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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