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お祭り騒ぎのColabo問題 炎上が決して収まらない理由

イメージ(PIXTA)

 

 先日お祭りがあり見てきたのですが、太鼓を叩きながら神輿が左右からぶつかりあう様相は熱気に溢れ、真剣な眼差しが印象に残っています。その光景と歴史的背景のある本件への、構成員がかける熱意には似た強さを高く感じます。

 さて、インターネット上でお祭り騒ぎ状態のColabo問題ですが、いまだその炎上がおさまる気配なく燃料が投下され続けており、ほんとに大変なことになっています本来無関係だと思ってた方面にガンガンに延焼させて、燃やされた人たちが途方に暮れているのを見ると可哀想だなって思いますね。そんな燃え広がる案件のひとつに、2022120日から受付がはじまったパブリック・コメントがあります。

「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針(案)に関する御意見の募集について」のパブリック・コメント(注1)(注2)。受付期間:2023年1月20日~2023年2月18日まで。

 パブリック・コメントとは、「国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的にしている制度」。

 このパブリック・コメントの方針案が、Colabo問題の本質に大きく関わる内容であり、この内容を理解しているかどうかでインターネット上で起きている炎上の見え方が全く変わって来ます。

 前提として「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(以下、困難女性支援法)が、超党派の議員がまとめた議員立法によって、2022/5/19に成立、2022/5/25に公布され、2024/4/1から施行されます。

困難抱える女性の支援強化 新法成立 66年前の売春防止法から脱却 2022/5/19

 この困難女性支援法とは、旧売春防止法が元の法律になると説明した方がわかりやすいかもしれません。困難女性支援法の成立に合わせて、旧売春防止法の第3章「補導処分」第17条「補導処分」、第18条「補導処分の期間」、第22条「収容」が廃止されました。

 この第3章補導処分は、長年戦後の負の遺産と表現される程に問題視されていました。なにぶん古い法律ですので、今の時代にそぐわないため法改正が求められていたのも事実です。「売春で捕まった女性が裁判で補導処分の判決が言い渡されると、婦人補導院へ収容される」事になるのですが、執行猶予処分があっても収容されてしまい、6カ月の間、刑務所に近い環境で広さ3畳の鉄格子がついている個室で過ごすことになります。いわば、やむにやまれず売春に従事することになった女性はその内容を問わず姦通以上の重罪の扱いとなり、かつて売春が日本社会でどのように扱われていたのかがく分かる法規なんですよね、旧売春防止法

 下記リンク先記事にある婦人補導院収容施設の写真を見ると非常に心が痛みます。

売春防止法の「負のシンボル」婦人補導院 なぜこれまで廃止できなかったのか… 2022/3/21


売春防止法違反の女性を「処罰」…婦人補導院に廃止求める声 2020/4/20

 

 また、困難女性支援法成立合わせて、旧売春防止法の第4章「保護更生」第34条「婦人相談所」、第35条「婦人相談員」、第36条「婦人保護施設」、第38条「都道府県及び市の支弁」、第40条「国の負担及び補助」が困難女性支援法へ組み込まれました。
 これだけですと、何ことかよく分かないと思うので簡単に説明すると、そもそも困難女性支援法の保護法益(法律の目的)は、夫から家庭内暴力(DV)を受けている女性などが避難する行政機関に係わる法律であって、この法案の元になった旧売春禁止法とはまったく異なった立法趣旨になってしまったことになります。ここで大事なポイントは、長年事業の中核を担ってきた行政機関をそのまま困難女性支援法で継続して運用するという点なのですが、これを勘違いしてゼロから新しく行政機関を立ち上げたり、民間団体だけで事業を請け負うような認識がインターネット上に広がってしまっています。純粋に勘違いな面もあり、ネットでの過激な批判の論調には大変問題があるように感じます。

 また、この困難女性支援法でも引き続き事業の中核を担うための組織が法案に追記されており、少しややこしくなりますが、婦人保護事業に関わる名称が変更されているので触れておきます。

・婦人相談所 → 女性相談支援センター
・婦人相談員 → 女性相談支援員
・婦人保護施設 → 女性自立支援施設

 また、困難な問題を抱える女性に対して、長年独自の支援を実施している民間団体が存在しており、そういった民間団体を「支援を行う機関」として、行政機関などと協働することが困難女性支援法に明記されています。他にも、福祉事務所、児童相談所、児童福祉施設、保健所、医療機関、職業紹介機関、職業訓練機関、教育機関、都道府県警察、日本司法支援センター、配偶者暴力相談支援センター等が協働機関等として明記されており、国や都道府県、市町村も含めた包括的な協働体制で困難な問題を抱える女性の支援に取り組んでいく内容になっています。

 簡単に説明すると、昔から全国に地方自治体や民間団体と協力している女性用の駆け込み寺がありましたが、時代に駆け込み寺の制度が追い付けなくなり、法改正をすることになったのです。駆け込み寺の制度を新しくしたため、民間団体にも頑張ってもらおう!というお話になったわけです。

 今回のパブリック・コメント受付は、困難女性支援法で定められている、各都道府県及び市町村に係わる基本方針を策定する過程の意見募集です。「法律はもう出来ているので、制度を運用する為のルール作りをしているから意見を下さい」と言った内容ですね。

次のページルール作りをしているメンバーに、Colabo代表の仁藤夢乃氏が参加

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谷龍哉

たに りゅうや

谷 龍哉(たに・りゅうや)

1983年生まれ。三重県伊勢市出身。ネット情報アナリストとして、インターネット上の社会事象や問題発生の経緯の情報収集、分析に従事。

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