キルギスタンでVR瞑想して暮らしたい! タコ部屋で自我に目覚めた男(後編)【たらい回し人生相談】
【たらい回し人生相談】〜ヤバいやつがもっとヤバいやつに訊く〜 連載第8回
前回は波乱万丈のYくんの来歴を追った。引き続き、今度はYくんの内面に焦点を当てつつ、彼の今後についてインタビューしていく。前回で述べた通り、彼は能力が高い側の人間だが、同時に感情面でかなりバランスの悪い部分があったようだ。彼は怒ったことがないどころか、怒りという感情を自覚したことがなく、自分に心があるという実感もひどく乏しかったという。長門有希かな? そんな彼は、どうやって心を見つけたのだろうか?
そして自我に目覚めた彼はこう思った。
「草原で瞑想して暮らしたい……」
■人生で初めて怒った:
Yくん:生まれて初めて怒るってことを学んだんですよ。それまで僕、怒った事ってなかったんです。自分には怒りがないって思ってて。たぶん怒らないっていうよりも自分の感情に気がつかなかったってことだと思うんですけど。
大司教:つまりこれまで経験しなかったようなストレスがあったと。
Yくん:まあそうですね。ハードな仕事をさせられているうちに「やばい、このままじゃ死ぬ」って気持ちが日増しに強くなっていって。ある時爆発したんです。
大司教:こちらから見たらそうなるのが遅すぎですね。なんで我慢してたの?
Yくん:Nくんと「学びがあるねー」とか言ってました。
筆者:具体的にはどんな感じだったんですか。
Yくん:仕事に境目みたいなのがない感じですね。思い出と言えばクリスマスの日なんか、放火魔のNくん(過去記事参照)と二人で残り物の崩れたケーキを寒い部屋で食べてて、Nくんが「おれたち何やってるんだろう」みたいな感じで泣きそうになってましたね。僕はろうそくに火をつけるべきか迷いました。
筆者:その辺がキレたきっかけですか。
Yくん:そのころから、なんというか「たまに心臓のあたりが冷たくなるような感じがするな」とは思ってたんですけど、ある時それが「怒り」なんだって気づいたんですよ。
筆者:感情に気付いたアンドロイドだ。
Yくん:怒るっていうのをやってみようって思って、あるとき粗相して居直ってる大司教に「ふざけんな!」って怒鳴ったんですよ。見よう見まねで。そしたら、大司教が「キレるってのはなあ! こうやるんだよ!」って絶叫して扉を蹴って壊すんですよ。お手本ですね。そうやって怒り方みたいなのを覚えていったっていうか。
筆者:最悪のハルヒって感じだ。
大司教:Yくん明らかに怒り方が不自然でしたからね。考えながら怒ってる感じ。キレ方のお手本を見せようかなと思って。前々からなんでキレないのかなって不思議だったし。
編集:それで扉壊さなくても。
大司教:私が壊した扉を絶対直さないと反抗するYくんに成長を感じました。扉をこう蹴って壊したんですけど。
(しばし大司教がキレる実演をしてみせる)
Yくん:そういうことで自分の感情を出すことを学んでいった面はあると思います。
編集:結局大司教が黒幕なんですね。
大司教:ワハハ。SST(ソーシャルスキルトレーニング)です。
Yくん:そういうのと同時並行になるんですけど、その当時流行ってた合法幻覚茶を飲んだり、謎の整体師に会ったりしてて。
大司教:ああ。アレね。
編集:幻覚茶っていうのがあるんですか。
Yくん:あります。南米の先住民などの間で使われる幻覚作用のある飲み物があって、それと同じ成分のものですね。そのころはネットで普通に買えたんですよ。
大司教:昔は幻覚キノコなんかもネットで買えましたからね。
編集:その幻覚茶は今もあるんですか。
大司教:海外で売ってはいますが、日本では実質的に禁輸になってます。大々的に宣伝して売る人が現れたので、政府も無視できなくなったんでしょうね。通関で水際作戦みたいなことをやっている。あの人が目立つことをしなければ今も買えてたかもしれません。
Yくん:それで僕は自分の心を見つけたんです。
大司教:へー。