社会の深海魚たち、ディズニー行って窒息【たらい回し人生相談】
【たらい回し人生相談】〜ヤバいやつがもっとヤバいやつに訊く〜 連載第10回
当連載も九回目に到達した。毎回、更新のたびに「こういう人たちとは関わりたくない」などと常識的な社会人様の感想が聞こえてきて、筆者としてもやる気が出る。そんな今日この頃だが、今回はちょっとした番外編となる。
場所はいつもの会議室ではなく、東京と名乗りながら千葉にある夢のテーマパークだ。今回、ちょっと大人の事情に配慮し、具体的なキャラクターやアトラクションの固有名詞は極力伏せさせていただくのでご理解いただきたい。これまでの企画の慰労(注1)という趣旨で、一部過去記事の登場人物も再登場する。
えっ? 読者はそんな楽しい企画なんか求めてないって? わかってます。大丈夫「たらい回し人生相談」の企画だよ。ちゃんとろくでもないことになる。
「みんなで夢と魔法の国に行きましょうよ!」
と大司教たちに声をかけてくれる人がいた。Rさんはオタクに優しいギャルで、大司教やその周辺人物にも何かと親切だった。ディ○○ー好きの彼女は大司教たちにその楽しみを分け与えるべく、ちょくちょく誘いをかけていたのだった。
夢や魔法とは縁のない大司教はその誘いを先延ばしにしていたが、とうとう根負けし「じゃあ行きますよ。やってやりますよ」と誘いを受けた。NくんとYくん(過去記事参照)ほかスタッフのみなさんも参加となり、ちょっとした連載の慰労会という趣旨にもなった。
大司教:そんなわけで、ついでに記事にしましょう。
筆者:行きますが、それはタダなんでしょうね?
大司教:入場料は経費になります。
筆者:あっタダ? やった。
以下余談。これまでの連載を見てうっすらとお気づきのかたもいただろうが、実は当連載は「大司教の周囲で起こるろくでもないトラブルや益体もない相談事の数々、なんの得にもならないが、せめて記事にすることでコストを少しでも回収しよう」という趣旨で進んでいた。
つまり人生相談というのは建付けにすぎない。どちらかというと「可燃ごみを燃やすついでに火力発電もする」とかに近い。つまり貴方が読んでいるのはリサイクルの産物である。社会的サーマルリサイクルだ。ベストタイムズはリサイクルの推進に熱心だ……。
■夢と魔法の国ツアー参加者:
Rさん:オタクに優しいギャル。ディズニーに詳しい
Qさん:Rさんの知人、大遅刻
大司教:黒幕
Nくん:放火魔、いまだ求職中(過去記事参照)
Yくん:瞑想家(過去記事参照)
Sさん:篤志家。Nくんと筆者にお金を貸した人(過去記事参照)年収60万(注2)
Wさん:動画編集者
筆者:ライター(無職の別名)
■案内役のRさんを順調に呆れさせていく一行:
当日、待ち合わせ場所は舞浜駅。この駅で降りる人はほとんどがパークに行く人で、これから夢と魔法の粉をぷんぷんに浴びることになる。時刻は午前八時だった。常識的な待ち合わせ時間だが、参加メンバーの多くは夜型なので、彼らにとっては早朝に等しい。
さて、さっそくNくんは遅刻。
Nくん:いや。僕は早く着いてたんですよ。でもみんな遅れるって思ったから、時間をつぶしていたんです。
Sさん:言い訳になってないよね。
Wさん:そういうとこだぞ。だから就職とかが(以下小言)
Nくん:タバコ吸ってきていいです?
Rさん:あ、Qさんはだるいからあとで来るそうです。
大司教:はい。
順調なスタートを切った夢の国ツアー(注3)。さてパークに移動すると、まだ開いていなかった。
筆者:え、まだ入れないじゃないですか。
Rさん:開園と同時に入って人気アトラクションに行くんですよ。そうすると待たずに乗れるんです。常識ですよ。
大司教:コミケみたいですね。
筆者と大司教はディズニーにほとんど知識がないが、NくんとYくんはけっこう詳しいようだった。待ち時間の間、Rさんはどのアトラクションに乗るか話し合いをする。
Rさん:スぺマンに乗りましょう。
Yくん:いいですね。
筆者:ちょっと、なんですかスぺマンって。性的なものですか。
Rさん:は?!
Nくん:いや、スペースなマウンテンを略してそう呼ぶんですよ。
筆者:その略し方だと下ネタにしか思えないですよ。スぺもマンも性的な意味にしか思えないもん。スぺと言ったらスペルマ(注4)しか思いつきませんな。
Rさん:はあ?!(怒)
さっそく文化圏の違いによりコミュニケーションの摩擦が発生。
そうこうしている間に、開園待ちをしている人たちの中に、有名キャラクターの耳を装着している人がちらほら見え始める。どうも彼らは耳を持参してきており、取り出してスチャスチャ装着しているようだ。どんどん場に耳が四つある人が増えてきている。
筆者:あの耳はなんの意味が?
Yくん:あれをつけることで夢と魔法のワールドの一員になるんですよ。
筆者:あっ、はあ……。
大司教:ようするに陽キャのコミケだなコレ。
筆者:そうですね。コミケですね。
Wさん:コスプレってやつだね。
大司教:ああいったシンボルを身につけて帰属を示すという行為は珍しいことではないですね。宗教組織でもよくあることです。
Rさん:(イヤそうな顔)
この時点で明らかに何かが食い違っていたが、それはそれとして、開園。
さっそく一行は彼ら言うところのスぺマン、すなわち「宇宙の山」アトラクションに向かう。これはローラーコースターと映像投影を組み合わせたアトラクションで、宇宙空間を体験できるとのこと。
■宇宙の山 〜夢と魔法の始まり〜:
Nくん:友達が紙(注5)食ってスぺマン乗るのが好きなんだよね。
Yくん:あ、いいね。
Nくん:ものすごい速度になるらしいっすよ。体感速度がもう光速!
Yくん:いいなー。
大司教:やれやれ。これだからサイケ勢は。
順番待ちの列でさっそく不穏な会話をするNくんとYくん。まわりに人がいるのにおかまいなしだ。最悪だ。
列が進み、中に入ると、コースターに乗客が効率的に詰め込まれ、アトラクションの中にどんどん入っていくのが見える。なかなか面白い光景だ。人々が娯楽を注入されて出てくるという感じである。
筆者:なんか工場みたいですねえ。
Sさん:まあそうですね。
筆者:トヨタのライン並みに効率的ですね。スタッフの練度が高い。ウォルトさんは娯楽を工業化したということなんですね。
Rさん:夢の国でそういうこと言わないでください(怒)
大司教:人間をこのように工業的に処理するという発想は、やはり近代に生まれたものと言えるでしょうね。ナチスドイツがその代表だと言えると思います。
Sさん:あのう。まわりに人がいるんで。
Rさん:(ものすごくイヤそうな顔)
さて、この時点では筆者は「いうて大して怖くないやろ」と高を括っていた。家族連れも多い有名遊園地のアトラクションなどたかが知れている。そう思っていた。
こわかった。
イヤちょっと無理ですねあれは。
乗り物酔いは、車に乗っている時などは体の動きと視覚から入ってくる動きの情報がマッチしないことで起こるというが、アトラクションはその原理を利用して映像とローラーコースターでパワーアップしたような感じだった。降りた後足がふらついた。
筆者:思った以上にきましたね……。
大司教:いやあ。これは強いストレスですね。
筆者:まだ足がふらつきます。
大司教:強い負荷でした。
筆者:これは娯楽なんでしょうか。
Nくん:えー、楽しいじゃないですか。
Yくん:そうですよ。
(注1)慰労になっているかは記事を読んだ読者の判断にお任せする。 (注2)過去記事で年収50万と表記したが、60万あるとの事なので訂正させていただきます。またジャガイモばかり食べていると書いたが「ベーコンとかも食べてる」とのことなのでその点も記載する。上方修正で何よりである。 (注3)遅刻ぐらいは織り込み済みなのでもうなんとも思わない。 (注4)ドイツ語で精液のこと。類語のザーメンもドイツ語である。今は減ったが、一時期のエロコンテンツではこの種の学術的用語がなぜかよく使われる傾向にあった。ちなみにアクメはフランス語である。 (注5)LSDもしくはその類縁体を指す隠語。ドラッグの剤形の一種としてのブロッター、すなわち紙に薬物を染み込ませたものを指す。LSD類は効果を表す量が微量なため、このような剤形が可能になる。
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