兵庫県知事・斎藤元彦に見る維新スピリッツの原点【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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兵庫県知事・斎藤元彦に見る維新スピリッツの原点【適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第70回


日本で大きな異変が起きている。猛暑が続き、台風、地震が直撃する可能性もある。北海道ではオオズワイガニが大量発生。先日、根室でハナサキガニを食べてきた適菜収氏は「人間、どんなに落ちぶれてもカニをねだるな」と言う。新刊『自民党の大罪』(祥伝社新書)で平成元年以降、30年以上かけて、自民党が腐っていった過程を描写した適菜氏の「だから何度も言ったのに」第70回。


斎藤元彦

 

■「その靴ほしいです。白い靴がほしいです」

 

 兵庫県知事の斎藤元彦に維新スピリッツの原点を見た。パワハラの犠牲になった人もいるので、笑いごとではないが、面白過ぎることは間違いがない。斎藤は、日本維新の会と自民党による共闘で知事に就任。吉村洋文との関係も深い。2021年の当選3日後には、馬場伸幸と並んで会見、「自民党に一定の軸足を置く一方で、維新の改革スピリットをしっかりと一緒になってやっていく」と述べていた。なお、20229月、日本維新の会から党の顧問就任を打診されている(その後、固辞)。

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 憲政史上というより、人類史上、ここまで「おねだり」する人間はいないのではないか。すでに名人芸の域に達している。よって、ここでは斎藤が引き起こした諸般の問題には触れずに、「おねだり」についてだけ述べておく。

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 報道によれば、斎藤は子供の頃から、祖父に「おねだり」をしていたという。そして、そのまま「おねだり」の道を突き進んでいく。県議会の調査委員会(百条委員会)が県職員に行ったアンケートの中間報告によると、「おねだり」の嵐の実態が見えてくる。

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 カニ、靴、姫路城のレゴブロック、播磨の牡蠣、40万円相当の革ジャン、玉ねぎ、養殖ノリ、黒枝豆、ゆるキャラ抱き枕、自転車、播磨織ネクタイ、法被、バースデーケーキ、日本酒……。アンケートに登場する斎藤の発言とされるものも、ことごとく面白い。「その靴ほしいです。白い靴がほしいです」「これはいい。もらえないか」「使わない物でも、とりあえず何でももらう、ほしがると職員から聞いた」「視察先は、何が食べれるか、もらえるかで決めていると聞いた」「茶菓子全て持ち帰り」「農家から大量の野菜をもらったり、牡蠣の養殖業者から大缶の牡蠣をもらった際も、独り占めして全部自宅に運ばせる」「(カニ業界の)関係者が、知事が何回も来てその都度、カニなどを持って帰ってもらっているが、それを目当てに来るので、もう来ないでほしいと言っているとのこと」。

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 面白いにも程がある。カニをせびりに来て嫌がられる知事。なお、革ジャンは高額なのでおねだりを断られたようだ。慌てる乞食はもらいが少ない。

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 私はPUFFYの「カニ食べ行こう」という歌詞を思い出した。「なんかちょうだい」というのはMr.オクレのネタだと思っていたが、伊武雅刀のほうが古いのか。

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 高市早苗が総裁選に出馬するという冗談みたいな話が出てきたが、過去にはなかなか含蓄のある言葉を残している。「さもしい顔して貰えるものは貰おう。弱者のフリをして少しでも得しよう。そんな国民ばかりでは日本国は滅びてしまいます」

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  私は「おねだり」という言葉から日活ロマンポルノを連想したが、「おねだり妻」みたいなタイトルのものは見当たらなかった。AVではたくさんあったが。Twitterで〝斎藤版・日活ロマンポルノ〟のタイトルを考えてくれた人がいた。『横すべり蟹野郎 ハサミでチョキチョキ』。

次のページチン次郎は「歩くポコチン」

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  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

✳︎

第一章 内田樹と『日本辺境論』

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

 ✳︎

第二章 自立を拒絶する人たち

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

 ✳︎

第三章 「正義」を笠に着る人たち

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

 ✳︎

第四章 陰謀論に走る人たち 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

✳︎ 

第五章 無責任な人たち

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

✳︎ 

第六章 恥知らずな人たち

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

✳︎ 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

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オススメ記事

適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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