「ボーイフレンド」(Netflix)と「いちばんすきな花」(フジ)からみる、視聴者たちの“浄化”への欲求【梁木みのり】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「ボーイフレンド」(Netflix)と「いちばんすきな花」(フジ)からみる、視聴者たちの“浄化”への欲求【梁木みのり】

ドラマ「いちばんすきな花」に出演した多部未華子

 

 20247月に配信された、Netflixオリジナルシリーズ「THE BOYFRIEND」(以下、「ボーイフレンド」)。日本で初めて、同性を恋愛対象とする男性のみが参加した恋愛リアリティー番組だ。発表時から注目を集め、配信中は連日上位にランクイン。世界中のファンに愛されるコンテンツとなり、配信後1ヶ月以上が経つ今でも、国内外の雑誌などで特集が組まれている。

 ここまで愛された理由の一つが、参加者9人の人柄と人間関係の築き方だ。恋愛リアリティー番組といえば、その多くが、さまざまな思惑が絡む駆け引きやドロドロの展開を見所としている。ところが「ボーイフレンド」の参加者たちの姿勢は、それとは真逆だ。恋した相手には気持ちをまっすぐに伝え、叶わなくても「伝えられてよかった」と言い、相手の恋の応援までするのだ。

 また、男性のみの場なだけに、恋愛感情だけでなく強い友情が育まれていく。むしろ“見ず知らずの人たちと共同生活をして絆を育む”という過程がメインで、恋愛はその絆のバリエーションの一つとして見ることさえできる。そのおかげで、最終的に恋愛が成就したペアは少ないものの、全員が人として成長して「忘れられない思い出になった」と言って帰っていく。

  国内のファンからは、「心が浄化された」「生き方を学んだ」といった感想がたくさん上がっている。まさに、それまでの恋愛リアリティー番組とは一線を画す内容だ。刺激が売りだったはずのジャンルで、なぜ今、このような“浄化”系作品が人気を集めたのだろうか?

 繊細に人間関係を育んでいく作品が最近注目を浴びた例は、他にもある。20231012月にフジテレビ系列で放送されたドラマ「いちばんすきな花」だ。こちらはフィクションの作品だが、“見ず知らずの人たちがひと所に集まり、絆を育む”という構図は一致している。

 登場人物それぞれに「共感が苦手」「優しすぎて損しがち」といった、リアリティーのある対人姿勢の悩みが設定されており、視聴者が自分の経験に重ねやすかった。毎週の放送後には必ずTwitterX)トレンドの1位になっていたのが、このドラマの何よりの特徴だ。

 また、中心的な登場人物は4人の男女で、その中での恋愛感情も生まれはするものの、最終的には誰もくっつかず、4人の友人グループとして温かい関係を続けていく。決して恋愛だけがメインにならない点も、「ボーイフレンド」と一致している。

次のページ「いちばんすきな花」は視聴者の生きる現実のモヤモヤを“浄化”していく

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梁木みのり

はりき みのり

ジェイ・キャスト所属ライター

ライター

Z世代。ジャニヲタ歴12年。K-POPオタク歴まだ2年。ジェイ・キャスト所属ライター。早稲田大学卒。

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