戦争リスクに備えろ!世界の富裕層は「ダボス会議」で逃げ場を漁る【林直人】
異能の起業家・林直人 「ダボス会議」裏側潜入記 #03
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スイスのダボスで毎年1月に行われる「ダボス会議」。その名前は教科書にも載っているぐらい有名だ。しかし、そこに“オモテ”と“ウラ”があることは知られていない。異能の起業家・林直人氏がダボスからの現地潜入レポート!全10回を集中連載する。第3回では、ダボス会議で新興国を見つめる、富裕層の目線に迫る。
■有事の逃げ場を確保したい富裕層
ダボス会議の舞台裏では、想像を超えた国際的な思惑がうごめいている。会議の場では、いわゆる「タックスヘイブン」と呼ばれる税金が極めて低い国々が存在感を放っていた。キルギス、モンゴル、イランのクルド人自治区、サウジアラビア、カタールといった国々が次々にブースを出展している。
これらの国々に興味を持つのは、単に税金を安くしたい富裕層だけではない。世界情勢が混沌とする中、戦争や有事に備えて「即座に移住できる逃げ場」を確保したい層も熱い視線を注いでいる。
現在、朝鮮半島や台湾を巡る地政学的リスクが高まっており、多くの専門家が「ここ1年から5年以内に朝鮮半島で有事が発生する可能性を感じる」と警告している。韓国で言えば、昨年12月にはクーデター未遂が報じられ、さらに最近頻発している謎の飛行機事故には「事故に見せかけた攻撃の可能性がある」と北朝鮮の関与が疑われ、緊張感が日ごとに増している状況だ。もし朝鮮半島や台湾で戦争が勃発してしまったら…と心配している富裕層は多い。
「逃げ場」として一番いいのはやはりアメリカだろう。私が経営する塾では韓国系や台湾系の生徒も在籍しているが、既にアメリカの永住権を取得したり、二重国籍を持ったりしている。
しかし、世界的に見れば、アメリカへ避難する手段を持っている富裕層は一握りだ。資産が二桁億円以上ある超富裕層は造作もないが、資産が数千万円から数億円規模では、アメリカの永住権取得は簡単にはいかない。
また欧米は物価も高い。イギリスでは、一食に4000円かかることも珍しくなく、これらの国々での生活のハードルが上がっている。
そのため、こうした準富裕層はモンゴルやキルギスなど、比較的簡単に滞在ビザが取得でき、物価の安い新興国を逃げ場として選択肢に入れている。ダボス会議の現場では「タックスヘイブン国家」としての魅力をアピールするパンフレットが大量に配布され、訪問者たちはこうした情報を真剣に吟味していた。
■魑魅魍魎の世界でもある
日本からの参加者にとっても、こうした場は重要な情報源となるが、油断は禁物だ。知人の日本人投資家も会場で各ブースを訪問し、各ブースで日本語を話せる担当者から詳細な説明を受けていた。彼は、「やはり日本語が通じるとニュアンスが分かりやすく、判断がしやすい」と語った。一方で、モンゴルのブースでは詐欺師のような人物に出くわし、「ちょっと怖いな」と感じたという。情報源の取捨選択能力が問われるのだ。
第2回でも触れたが、ここで日本企業の姿はほとんど見られない。大企業は富士通ぐらいであった。
その背景には、日本特有の高い税制と、国際的な感覚に乏しい現状がある。シンガポールやドバイのような低税率国では、多少の無駄な投資も許容されるが、日本ではそうはいかない。加えて、日本側に強い英語人材がいないことも、ブース運営のハードルを高くしている。
しかし、国際的な影響力を持つためには、日本もこの舞台での存在感を取り戻す必要がある。果たして、日本が再びダボス会議で主役となる日は来るのだろうか。
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p.s.ダボス会議の裏側(非制限エリア)でダボス会議の期間中1週間1億円でレストラン・会議室・ブースを含めた施設を目抜き通りで貸してくださるという物件オーナーを知っています。
日本人を代表してダボス会議にブースを出したいという方はyourmanifestojp@gmail.com
までご連絡ください。
(ダボス会議・世界経済フォーラムの正式メンバーでない企業の方は、ダボス会議・世界経済フォーラムの公式の支援・ブランディングは受けられないそうですが、とりあえずオーナーさんとのzoomミーティングを設定することは可能です)
文:林直人