Scene.34 どのみち風は吹くのさ!
高円寺文庫センター物語㉞
毎年、春恒例の棚卸し。
かつては一日、店を閉めて終わらせたものだが。最近は、店を閉めているのも勿体ないと営業中の昼間に二日かけて棚卸しをするようになっていた。
「じゃ、念のために簡単な説明ね。
二人一組になって、商品の本体価格を読み上げる担当と、聞き取って電卓に打ち込む担当で、棚一本分の横一列を終えたら小計して棚卸し表に記入してね」
「店長。接客は、どぎゃんすると?」
「シャキが助っ人に来てくれたけんが、奇数になったけん。ボクがひとりで、レジ周りを接客兼ねて棚卸しするばい」
「店長。本屋にとって、棚卸しの意味ってなんですか?」
「わ、シャキ。このタイミングで聞く?!
ひと言で言えば在庫管理ね。年度末決算から、多少前後しても商品の在庫を数えて売上げに対応する商品原価を把握することなの」
「つまり、総売り上げに対して在庫金額を勘案すると純利益が計上されるということですよね」
「クレバーなアタマは瞬時に解析するな・・・・
要は、儲かっているのかヤバいのかが見えてくる。本屋は委託品といって返品できる商品が多いんだけど、うちは返品できない買切り品の比率が高いので棚卸しの際は分けて集計するのね」
「買切り品で売れ残りは不良在庫になるから、たまにTシャツなどのバーゲンをしているんですね」
「そゆこと!
各論は、本屋事情に秀でたロッカー内山くんに聞いて」
「店長!
今日から、清志郎さんの握手会整理券がスタートじゃないですか」
「そうだけど、集中するのは土日じゃないかな。
三週間の余裕は取ったし、前回の経験があるから大丈夫だろ」
Scene.34 どのみち風は吹くのさ!
お天気が心配された『浅草キッド・サイン会』。ビッグイベントに強い晴れ男店長の面目躍如で快晴となった!
一週間前に始めた、サイン会対象書籍購入で整理券が、100名を越す勢いでさばけてしまっていた。
文庫センターのROCKといえば、重要な一角を担う出版社のロッキング・オン。雑誌だけでも『rockin’on』『ROCKIN’ON JAPAN』『CUT』『H』『SIGHT』と、ロックでサブカルな街の高円寺には最も相応しい出版社だった。
クロスする営業さんや編集さんに、「なんかイベントできない?」「イベント先を、探してたら頼むね」のアッピールが、出版社ロッキオンのイベントに結実した!
浅草キッドさんの最新刊は『発掘』。
1998年から01年まで、『東スポ』に週一連載していたものをロッキング・オンがゲットするなんて! 漫才スタイルのノリで、アメリカの同時多発テロに触れちゃうわと、痛快だったのだが発表されなかった膨大な原稿と大幅加筆してまとめたのが本書!
お二人して語れる書ける強みは、2段組みの400ページで1500円は買い得なんてもんじゃない!
「お! 店長。そこまで持ち上げてくれるんなら、今日はたっぷりサービスしちゃうよ!
さ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。浅草キッドのサイン会だよ!」
「玉袋さん、ありがとうございます。博士さん、本日はよろしくお願いします!
100名様を越す勢いなので、お時間かかると思いますが重ねてよろしくお願いします」
「店長、心配はご無用。現場はボクらに任せてね」
最強のパフォーマンスに畏れ入った、浅草キッドのお二方。サイン中でも、こちらが油断していようものなら『さあ、サインはなんにでもしちゃうよ。ただし、本は買ってよね』ってな具合で、芸人根性100% の実力を見せつけられた!
イベントをやるような本屋は、芸人さんの根性を学ばなければならない。と、勉強になったサイン会でした。