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ダムに沈んだ川原湯温泉山木館、
高台で新しい歴史を刻む~その1~

川原湯温泉は源頼朝が発見したと伝わる歴史ある温泉地です。

草津温泉の隣町にある川原湯温泉は、
源頼朝が発見したと伝わる歴史ある温泉地です。
約80度の高温泉がわき出す共同浴場を中心にして、
かつては17軒の温泉旅館が建ち並んでいました。
一番の老舗が「山木館」です。
創業は江戸時代に遡り、現当主で14代を数えます。
その山木館が2013年9月、見晴らしのいい高台に移転し、
新しい施設で再オープンしました。
八ッ場ダムの建設に伴う移転です。

民芸調の落ち着いた佇まい。
暖簾の向こうにはシンボルであった水車もあります。

 

 

 

 

 

 

 

「先祖代々350年以上、住み慣れた土地を離れても
“その歴史は継続している”という雰囲気が残せたら……」。
そういう思いをこめて、ご主人と女将さんは、
新しい宿づくりをはじめました。
敷地内にある蔵と食事棟の古民家は、
ダムに水没する集落から移築したもの。
蔵は新たに図書スペースになりました。

川原湯で生まれ育った女将さんを支えてきた東京出身のご主人。

 

 

 

 

 

 

 

暖炉のある吹き抜けのラウンジには、
古民家から移築された太い梁が走っています。
館内は白壁と木のぬくもりを大切にした民芸調の造りです。
そのため新しい空間であるにも関わらず、大変落ち着きます。
中庭を彩る季節の草花を眺めながら渡り廊下を歩いていくと、
大浴場や客室が見えてきます。

囲炉裏の間もある客室。古民家の風情に癒されます。

 

 

 

 

 

 

ゆったりとした敷地に、客室はわずかに8室。
囲炉裏のある和室やベッドのある和洋室、
檜風呂のついた二階屋の離れに至るまで、
すべてにプライベート庭園とテラスが備わるという
贅沢な空間使いです。
目の前には吾妻渓谷の山並みが広がりますし、
ゆくゆくは八ッ場ダムが完成し、水辺の宿になります。

こちらは檜風呂付きの離れ。二階は寝室になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女将さんとご主人が特に力を入れたのが、
移築した蔵に作った図書スペースです。
壁一杯の本棚に、町や温泉に関する本、
美術書や小説などが並べられ、
二階にはごろんと寝転ぶことができる場所もあります。
机に置かれた思い出帳には、
「時間を忘れて過ごすことができました」
という女性ふたり旅の声や、
再開を祝う家族連れの常連さんの声などが綴られていて、
「宿は愛されている!」を感じます。

(その2、温泉編に続きます)

蔵を活用して誕生した図書スペースは居心地のいい空間です。

 

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のかた あきこ

のかた あきこ

福岡県福岡市出身。旅ジャーナリスト、フリーライター&編集者、温泉ソムリエ、まちづくり案内人。早稲田大学卒。旅行読売出版社編集部を経て2002年独立。旅と温泉に詳しく、宿本"旅美人SPECIAL"では編集長を務め温泉旅館に関する書籍を多数製作。その他、木楽舎『ソトコト』温泉日和連載。テレビ東京「ソロモン流」などでも紹介。本誌でも『一個人』×星野リゾート「大人の休息旅」を連載中。「まちづくり会議2011&2012」では全国からパネラーを集め、まちづくり人案内人を務めた。公式サイト「のかたあきこオフィシャルサイト」(http://nokainu.com)


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