部下のホンネ「上司が何を言っているのかがわからない」
部下への指示は、「進研ゼミ」の教材並みの丁寧さで
部下に命令をするときには、なるべくわかりやすい表現を心がけよう。なぜなら、わかりにくい表現で指示をされても、何をしてよいのかがわからないからである。
ピアノを教えるのが上手な先生は、「音をもっと響かせて」などとアドバイスしない。
「音を響かせる」と言われても、どうすれば「音が響く」ようになるのかが、さっぱりわからないからである。
教えるのが上手な先生は、「もっと中指を高く持ち上げてから弾いてごらん」と指導をする。そうすると音を響かせることができるからである。
わかりにくい指示を出しておきながら、部下がそれに従わないと、血相を変えて怒鳴る上司がいるが、それは指示を出した上司のほうが圧倒的に悪い。
「あれ、やっといてよ」
では、何をどうすればいいのかがわからない。
今の若者には、“以心伝心”を期待するほうが間違いである。何を、どのようにすればいいのかを、一から十まで説明してあげるのが、親切な上司だ。
ルイジアナ州立大学のアルヴィン・バーンズは、抽象的なモノ言いでは、人は反応しないことを実験的に確認している。バーンズによると、人は具体的なモノ言いをしてもらわないと理解できないのだという。
私は、小学校の時に野球をやっていたが、コーチの言う「肩の力を抜け」というアドバイスが、まったくわからなかった。どうすれば肩の力を抜くことができるのか、そのやり方を指示してもらえなかったからである。
もし肩の力を抜かせたいのであれば、「まず目いっぱい両肩を上に持ち上げてごらん。それから、ストンと肩を落とすんだ」などと言ってあげないと、子どもには理解できないのではないかと思う。
部下に指示を出すときには、自分の出す指示が、どれくらい具体的なのかを考えなければダメである。指示を口にする前に、もう一度、自分の頭の中で咀嚼し直し、できるだけ細かく伝えよう。
「できるだけ大きい会場を押さえてくれ」
という指示では、部下も判断に困る。
「できるだけ大きい」という部分が曖昧である。自分では、「500人を収容できる会場」という意味で使っていても、部下は、「50人を収容できる会場」が、「十分に大きい」と判断するかもしれないからだ。
「お得意さんのところをまわるから、甘いモノを買ってきてくれ」
という指示も、やはり判断に迷う。「甘いモノ」というのが、和菓子を指すのか、水菓子なのか、洋菓子なのかがわからないからだ。
この場合にも、「お得意の○○さんのところをまわるから、おまんじゅうを買ってきてくれ。あの人は糖尿に気をつけているから、甘さを控えたやつが喜ばれると思う」と、詳しく伝えるべきである。もっと詳しく、「どこそこにあるお店の、これこれの銘柄の1000円のおまんじゅうを頼む」と教えると、部下は間違いようがなくて助かる。
指示はなるべく詳しく。
そのほうが部下は助かるし、上司も自分が望んだ行動を部下にとってもらえることができて、お互いにハッピーである。