「子供のころ、どんなことが好きでしたか?」古市憲寿さんに聞く!(17)
「図鑑」という社会の見取り図をつくる
サメではなく「サメ図鑑を作ること」が好きだった
小学生の頃にめちゃくちゃハマったことがあります。それは「サメ図鑑」を作ることです(笑)。
当時、サメがすごく好きだったんですけど、サメだけの図鑑って売ってなかったんですよ。だから、自分で作ろうと思って。いろいろな魚図鑑を集められるだけ買ってもらって、そこからサメ類だけを情報を集めて一冊にまとめ上げたんです。自分で必要な情報をピックアップして、文章も書いて、サメの絵も描いたりして……すごく楽しかったんです。それで、作り終わった時に気づいたんです。「自分が好きなのはサメ自体よりも、図鑑を作る行為だったんだ」って。
図鑑作りの他には、架空の町のバスの路線図や時刻表をつくって、一人で遊んだりもしていました。きっと、情報を整理しながら世の中の“見取り図”を作るのが好きだったんですよね。俯瞰して社会を見下ろしたい、見晴らしたいっていう欲望が、この頃からあったんだと思います。
僕が今やっていることも、「筋道を立てて情報を整理して、社会の見取り図を作っていく」という点で、図鑑と通じる部分は多々あります。
当時の周りの同級生たちは「世界名作全集」などの物語作品をよく読んだりしていましたけど、僕はほとんど図鑑しか読んでいませんでした。今でも、文学や物語ってあんまり読まないんです。中学の後半からはホラーにはまって、角川ホラー文庫のシリーズを片っ端から読むようなことはしていましたけどね。
マンガも小学5年になるまで買ったことがなくて、はじめて読んだのは「ドラえもん」でした。それも「『ドラえもん』の秘密」っていう当時流行った考察本を読んだことがきっかけで、ストーリーを読みたいというよりは、考察内容の検証をしたかったんです。僕の関心はいつも「物事を整理して並び替える」ようなところに向かってしまうんですね。
当時は今ほどAmazonのようなネット通販も整ってなかったので、ほしい図鑑を探すのも大変だったんです。図書館の司書さんに相談したり、そこで「八重洲ブックセンターって大きい書店があるから行ってみたら?」と聞きつけて行ってみたり……足を使って情報収集をしていたなと思います。