【連載】適菜収 死ぬ前に後悔しない読書術
〈第11回〉道はすでに示されている
哲学者・適菜収が「人生を確実に変える読書術」の極意を語る!
「読書で知的武装」するなんて実にくだらない!
「情報を仕入れるための読書」から、いい加減、卒業しよう!
ゲーテ、ニーチェ、アレント、小林秀雄、三島由紀夫……
偉人たちはどんな「本の読み方」をしていたのだろうか?
正しい「思考法」「価値判断」を身に付ける読書術とは?
哲学者・適菜収が初めて語る「大人の読書」のススメ。
第11回
道はすでに示されている
濫読期、つまり「子供の読書」を卒業したら、ひたすら「よいもの」に触れることが大切です。
小林秀雄は言います。
普段からきちんとした料理を食べていれば、ダメな料理が出てきたときに、一瞬でどこがダメなのか指摘することができる。
逆は成り立ちません。
まずいものをいくら大量に摂取したところで、価値あるものを具体的に評価することは不可能です。
三島由紀夫も同じことを言っています。
きちんとしたものに触れ続けることによってのみ、人間は価値判断能力を身につけることができます。サミットというスーパーマーケットで買いものをしていたら、モーツァルトの「ハフナー」がかかったのですが、これがどうしようもない。スーパーマーケット用に編曲したものかとも思いましたが、一応オーケストラが演奏していた。ピンの演奏が頭に入っていれば、ゴミは一瞬でわかります。
ゲーテは道はすでに示されていると言います。
つまらないところでくだらない努力をするのは時間のムダです。
すでに道は示されているのだから、それをたどればいいのです。
それにいつ気づくかということですね。
〈第12回「世界で一番すごい本」につづく〉
著者略歴
適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』(講談社)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』(文春新書)など著書多数。