あおむろひろゆきのてくてく子育て日記〈第9話〉「窓の外の流れ星」
子どものひと言で、日常の風景が映画のワンシーンのように……
先週末に引越しをしました。家の近くにある公園は、ターザンロープやアスレチックのある大きな公園から、寂れたシーソーと木でできたブランコしかない小さな公園に変わり、夜が来るたびに響いていた蛙や虫達の歌声は、カタンカタンという電車の走る音に変わりました。
引越し当日の夕方、保育所から帰ってきた子どもはとても不思議そうな顔をしています。リビング、寝室、台所にお風呂と、ひと通り家の中を見て「いい感じね」と言ったので、まずはひと安心。その日は片づけでバタバタしている私たちをよそに、探検をしたりおもちゃを広げて遊んだりと、ずっと楽しそうにしていました。ところがどうも旅行に来ているのだと勘違いしていたようで、 翌日朝には「たのしかったね。じゃあ、おうちかえろう」と言います。何日か経って、ようやくここが自分の新しい家だと分かってくれたようでした。
寝室からは、大阪方面や京都方面へ流れる電車がよく見えます。ふたりでカーテンに頭を突っ込んで窓の隙間から電車を見ていると、子どもが小さな声で「おほしさまみたいね」と言ったので、その瞬間この景色が映画のワンシーンのようにロマンチックなものになりました。
何度も目の前を通過する流れ星、その小さな光に照らされた子どもの横顔を眺めていると、どうしようもないくらい胸がいっぱいになってしまいます。子どもの感性によって私たちが普段見ている何気ない景色が突然ドラマチックなものになる事はよくあることなんですけど、特に今回の言葉は印象的でした。
でもね、ひとつだけお願いしていいかな。こないだお坊さんの頭を指差して「おほしさまみたい」って言ったでしょう。あれは、やめてちょうだいね。
この連載は隔週金曜日の更新です。第10話は、2週間後の7月8日(金)に更新予定です。次回もお楽しみに!