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菊池涼介の新たな一面がもたらした快進撃 
石井琢朗が認める献身性、黒田博樹が絶賛する「肩」

広島の好調打線を象徴する「少ない」犠打数。2番・菊池涼介の見過ごせない献身性。

■バントが激減しても得点力が向上した理由

 今年の広島は犠打をしない。

 ここまで110試合で71犠打。昨季がリーグ3位の135(1位が阪神の138、2位がDeNAの136)であったことを考えれば、143試合に換算しても100に満たないペースにまで激減した。打線の好調さもあるだろうが、なにより2番菊池涼介への信頼度の高さが表れた数字と言ってもいい。

 好調広島打線を引っ張るのは、田中、菊池、丸の同学年上位打線トリオだ。それは緒方孝市監督、石井琢朗打撃コーチも認める。石井打撃コーチは「3人はすごくマークされている。その中で本当に我慢してやっていると思うよ」と現役時代同じようにリードオフマンとして好投手たちと対峙してきた経験から3選手の苦悩が分かる。中でも「キク(菊池)が一番考えているだろうね」と続ける。

 シーズン序盤から、初回に1番田中が出塁し、無死一塁となっても犠打のサインを出さなかった。緒方監督は「バントは走者を進めるためだが、相手に1アウトをあげることにもなる。状況に応じて送ることもあるが、みすみすアウトをあげる必要はない」と説く。

 1点勝負の終盤には手堅く犠打のサインを出しても、序盤は積極的に攻めた。それが今季好調な攻撃陣を活性化させる好循環を生んでいた。

 その戦術のなかで立て役者となるのが2番菊池だ。
 菊池といえばシーズン犠打数の球団記録を持つ。しかし今季はひと味違う。開幕直後、芸術的ともいえる右打ちで一、三塁の好機を幾度となく作った。また無死二塁では二ゴロで自分を犠牲にして走者を進める献身性も併せ持つ。シーズン中盤には対戦相手は執拗な内角攻めに苦しんだ時期もあったが、「キクにとって成長する時期。あいつが持っている力はまだまだこんなものじゃないから」と石井打撃コーチ。あの手この手で抑えようとする相手のマークをかいくぐりながら、安定した働きを見せる。犠打の数字が減った代わりに、走者を進める凡打は増えた。それでも打率は3割超え。決して目打立たないものの、2番菊池の献身性と安定感が好調打線の潤滑油となっている。

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前原 淳

まえはら じゅん

1980年7月20日、福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。'03年に大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社「サンフィールド」に入社。「アスリート」編集長などを歴任し、2014年12月にフリー転身。著書に、広島カープが16年ぶりにAクラス入りを達成した2013年の奇跡を描く「カープストーリー」(KKベストセラーズ)がある。




 



 


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