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残され方がイカしている城 桑名城 

鈴木輝一郎 戦国武将の史跡を巡る 第11回

岐阜在中の歴史作家・鈴木輝一郎がゆるりとめぐる、戦国武将の史跡。
つい見落としてしまいがちな渋い史跡の数々を自らの足で訪ね、
一つ一つねぶるように味わい倒すルポルタージュ・ブログシリーズ開幕!

外濠まで残ってるなんて素敵!

城の壊されかたにはいろいろある。
いやまあ、いきなり物騒な話からはじめてナンですが。
ただ、城は行政施設である以上に軍事施設でもある。
忘れがちですけどね。
だもんで、城というのは意外と残っていないものです。
合戦で負けた側に立てこもられると厄介なものなので。
 
そういう面でみてゆくと桑名城はかなり特殊です。
作ったのは家康四天王のひとり、本多忠勝。

 

『城』イコール『天守閣』というイメージが強いのですが、天守閣は軍事的・政治的な建築物としてはあまり意味がない。
実際には宝物殿ぐらいにしか使い道がない。

でも、城のシンボルとしての印象は強烈。
戦災や失火で焼失したあと、せっせと天守閣だけ鉄筋コンクリートでつくりなおしたり、「史実では天守閣はないけれど作っちゃえ」とかいうのもけっこうある。
桑名城は元禄時代に天守閣は火災で焼失し、以後は再建されずにそのまま幕末を迎えます。
ここいらはまあ、普通のお城と同じ。
江戸城の天守閣もそうでしたね。

その反対に、軍事的にとても重要なのに(重要だから、か)真っ先に潰され、滅多に再現されないのが『濠(「堀」とも書く)』。
河川から水を引き入れたり、川をそのまま濠として転用したものは残っていることもあるんですが、たいていは埋め立てられます。
城下町を散策して、商業地でもないのに突然広い道があらわれたら、
古地図をあたってみるといい。
そこは濠のあとです。
 

 

桑名市に着いたらカーナビで「九華公園」と入力すると、桑名城跡に案内してくれます。
写真は桑名城の縄張りの様子。
 

写真では割愛しましたが、実は三の丸の外側にさらに東海道・七里の渡に通じる外堀も現存する、という、とても珍しい城です。

地図を睨むと、揖斐川がすぐ隣。
水源から近いせいか、濠の水もとてもきれいです。
よくこれだけの城が残せたものだ、なんて偉そうに感心しちゃったりするのでありました。
<了>

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鈴木 輝一郎

すずき きいちろう

作家

1960年岐阜県生まれ。小説家。歴史小説『浅井長政正伝』『戦国の凰 お市の方』など著書多数。2008年には著作が50冊に達した。

日本推理作家協会・日本文藝家協会・日本冒険作家クラブ会員。


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