アメリカ野球が見る「KOSHIEN-甲子園-」
(上)最大のメジャーリーガー産出国・ドミニカが「投げない理由」
熱投と甲子園。今こそ考えたい日本野球の在り方。
■突出した日本人投手のレベル、その耐久性は?
夏の甲子園が終わり、二週間が経った。この間、高校野球界を盛り上げた話題は、U18アジア選手権だ。
5年ぶりの優勝を果たしたわけだが、日本代表が他国に比し群を抜いたのが投手のレベルの高さであったといえよう。作新学院・今井達也、広島新庄・堀瑞輝、履正社・寺島成輝、花咲徳栄・高橋昂也など今後の球界を背負って立つような投手たちが堂々のマウンドで頂点へと導いた。
さて、彼らの多くは今夏の甲子園に出場し、多くのマウンドに立っている。いまなお、議論の的となる登板過多か否かの問題について、前回、『アメリカ球界が見る「KOSHIEN-甲子園-」「日本の高校球児は投げすぎだ」は本当なのか。』と題して、アメリカ野球が高校野球を見る、ひとつの指標を提示した。
日本の投球過多の弊害を指摘する際、アメリカ野球のあり方を全面的に支持して論を展開するのは適切ではないことがお分かりいただけたのではないだろうか。甲子園とは特殊な世界である。そこでプレーする選手は投手だけではない。いろいろな思いがあって、高校野球という舞台が存在する。多様な議論がされたのちに、この問題の本質が語られ、そして丁寧な結論が出されることを望みたい。
今回は、その議論の一助として、メジャーリーグにもっとも多くの選手を輩出するドミニカ共和国は、投手育成、そして日本野球をどう見ているのかについて、紹介する。
前回同様、メジャーリーガーや記者などへ徹底的な取材をとおして、日本人投手の評価とそのポジティブ、ネガティブ両面を記した杉浦大介氏の『日本人投手黄金時代』より、引用したい。
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■〝ラティーノ〟が見る日本野球
日本より多くのメジャーリーガーを輩出する国は自国でどのように育成をし、日本の甲子園についてどのように見ているのだろうか。「日本との差」を知るために、もっとも多くのメジャーリーガーを生んでいるドミニカ共和国の記者たちに話を聞いてみた。
ニューヨークのスタジアムでよく姿を見かけるドミニカ共和国出身のメディアに日本の高校野球について尋ねると、大抵はこんな答えが返ってくる。
「〝甲子園〟? ああ、そのトーナメントのことは知っているよ。田中や松坂はその大会でスターになったんだろう?」
ただ、さらに詳しい知識がある記者はほとんどゼロに近い。知っているのは、〝日本ではハイスクール・ベースボールが大人気〟〝プロへの登竜門的なトーナメントになっている〟といったくらいか。そして、10代の投手にとってハードな大会であることを説明すると、リアクションはやはり肯定的ではなかった。
「ドミニカ共和国では投手がそんな使われ方をすることはあり得ない。そもそもドミニカではアマチュア野球はそこまで組織が整っていない。なぜなら、ドミニカのコーチたちは常にプロを意識して選手を育てるからだ。未来のプロ選手を育て、金を稼ぐことが目的だからな。すべてはビジネスなんだよ」
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