高校野球NO.1メディア編集長に聞く強豪校の秘密。技術だけではない「野球ノート」で鍛える「野球脳」
夏の甲子園が終わり、新しい夏の甲子園へのストーリーはすでに始まっている。
最大の夢、甲子園のために。綴られる球児たちのノート
作新学院の54年ぶりの優勝で幕を閉じた第96回全国高校野球選手権大会。決勝戦で戦った北海高校とともに、全国の高校球児たちのなかで、もっとも長い時間同じチームで、同じ夢を追いかけることができた二校は、いまどんな思いを胸に秘めているのだろうか。
高校球児にとって、最大の夢である「甲子園」。
その舞台にまで上り詰めるために、球児たちは日々さまざまな工夫をし、研鑽を積んでいる。そのなかで昨今「野球ノート」なるものが注目を集めている。
北海道日本ハムファイターズで活躍する大谷翔平選手が花巻東高校時代に「目標達成用紙」を書き、成長の糧としていたことは、野球ファンの間ではよく知られるところだろう。花巻東高校はこの「目標達成用紙」以外にも、選手個々が自主的に「野球ノート」をつけているのだが、実はこうした取り組みは高校球界でも決して珍しい取り組みではない。
なぜ多くの高校が「野球ノート」に取り組むのか。シリーズ累計15万部を突破した『野球ノートに書いた甲子園』を執筆する高校野球専門メディア「高校野球ドットコム」編集部の編集長、安田未由氏にその秘密を聞いた。
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――野球ノートとは何ですか?
「高校球児の皆さんが毎日の練習を振り返り、自分の日誌のような形で、その日あったことや自分の思いを綴っていく練習日誌のようなものです。
チーム全体で取り組んでいる高校があれば、自主的に取り組んでいる選手もいます。チーム全体で野球ノートを書いている場合、それが、選手と監督との交換日記のような存在にもなり、毎日、放課後の練習で、監督から日誌が戻ってきて、それを開く瞬間は、毎回ドキドキしながらページをめくるそうです」
――そもそも野球ノートを知ったきっかけはなんでしたか。
「高校野球ドットコムでは、大会だけではなく、全国各地の野球部の練習も取材しているのですが、その中で、野球ノートに取り組むチームと出会うことが多かったんです。最近は下校時間が厳しく定められていたり、またサッカーやラグビーといった部活との共存のため、グラウンドでの練習時間が短いチームが増えてきました。それを補うためにノートを書く時間も1つの練習だと捉えて、野球ノートを書く。そうした取り組みをすることでチームも成長すると信じて取り組む高校が、本当に大会で勝ち上がっていく様子をみて、野球ノートへの取り組みを探りたくなりました」
――具体的に、その取り組みを教えて下さい。
「チームによってノートの取り組み方は違うのですが、例えば、西東京の日大鶴ヶ丘高校では、自分で一日を振り返る個人ノートの他に、チーム全体で、試合中に監督から言われた言葉を書き綴り、試合後のバスの中で選手たちがそれを読んで試合を振り返る「反省ノート」を取り入れている。さらに、朝清掃の取り組みについても、次のグループに引き継いでいけるように、「清掃日誌」も含めて、3冊のノートを活用しているチームもありました。
他にも、投手・内野・外野などの同じポジションの中でやり取りする、「ポジションノート」を個人ノートにプラスして取り組んでいるチーム。何か部のルールが守れなかったときに、グラウンド100周などの体力的なペナルティではなく、ノート20ページの反省文を書くというチームもありました。本当に各チームそれぞれの活用をしています」
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