熟年層の間で大流行!「官能小説」の朗読会
門倉貴史著『不倫経済学(ベスト新書)』より紹介
◆熟年男女の間で「官能小説」の朗読会が大盛況
門倉貴史著の『不倫経済学(ベスト新書)』の第3章「暇と風俗産業の経済学」より、官能小説のトレンドを紹介する。
中高年の男女が繰り広げる悲喜こもごもの恋愛模様では、1年を通じて巨額のお金が動いている。もちろん、この中には本気の恋愛だけでなく、性風俗産業などでの遊び感覚の疑似恋愛も含まれる。
そこで、中高年の男女の間で流行っている最新の「恋愛ビジネス」の数々を見ていくことにしよう。日本の性風俗産業の市場規模は年間約5兆円であるが、そのうちの約3兆円は中高年層の需要で占められると推定される。
いま、熟年の男女の間で大盛況となっているのが「官能小説」の朗読会だ。これは、フェイスブックやLINEなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で参加者を集い、選りすぐりの官能小説をみんなで輪読していくというもの。参加者は40代、50代の熟年の男女が多い。
どの参加者も官能シーンを情感たっぷりに読む。セクシーボイスで感情豊かに、あえぎ声を表現しているうちに、参加者それぞれが変な気持ちになって妄想がどんどん膨らんでいくという。ある熟年の貴婦人は、自分の発する淫らな声を朗読会に参加している男性諸氏に聞かれていると考えるだけで、大興奮してしまうそうだ。
朗読会に参加しているうちに、仲良くなって、そのままカップルが誕生するというケースもある。ただ、官能小説朗読会の参加者は、ピュアな心を持った人が多く、2人だけでホテルで密会することになっても、若い男女のように、くんずほぐれつの淫靡な肉体関係になることはなく、ただ、ぎゅっと手をつなぎながら官能小説を読み聞かせあうだけ。
銀座のとあるバーを会場にして、そこに人妻やプロの女性のナレーターを呼び、官能小説マニアや声フェチの中年男性たちに官能小説を読み聞かせるといった朗読会もある。官能小説は昭和30年代のものがエンターテインメント性が高く、人気だという。
さらに、最近では女性が官能小説マニアや声フェチの男性客にマンツーマンで官能小説を読み聞かせるフェチ専門店も増えている。
女性は、仕切りのある部屋で、仕切り越しに男性客が選んだ官能小説を読み聞かせる。
男性客が女性の体に触れたり、話しかけたりすることは基本的に禁止されている。男性客との直接的な絡みは一切ないので、安心して朗読に集中することができる。料金は、1回の朗読(20~50分程度)につき3千円から5千円ぐらい。
官能小説を朗読したCDも、通販サイトなどを通じて声フェチの中高年男性が購入している。お値段は2千円~3千円ぐらいが相場だ。
ただ、いくつか問題も出てきている。官能小説の読み聴かせがブームとなる中、ラインやカカオトークなどのSNS上でメッセージを交わし、男性客が個人的に女性に官能小説の朗読をお願いするケースが増えている。
この場合、女性は見知らぬ男性のところへ出向くことになるため、性犯罪などに巻き込まれる危険性が高いのだ。
また主婦の間では、SM官能小説が人気を集めている。SM官能小説の主な読者層は30代から40代の女性で「マミー(お母さん)ポルノ」と呼ばれる。
専業主婦は日々の家事仕事に追われて、ドキドキすることやときめくことがなくなっている。自分の知らない怪しげなSMの世界を垣間見ることができるという点に魅力を感じるらしい。
官能小説は書店で購入するときに恥ずかしいという理由から、これまで主婦層の需要はあまりなかった。
しかし、近年では電子書籍が普及してきたため、購入時に気恥ずかしさを感じることがなくなっている。
とくに爆発的な売り上げを記録しているのが、英女性作家E・L・ジェームズさんの『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』と続編2作の3部作。
内容は、米シアトルを主な舞台に、大学を卒業したての21歳の女性アナスタシア・スティールが、27歳の起業家クリスチャン・グレイ(ちょっと危険な感じがする完璧な男性)によって官能的なSMワールドに惹き込まれていく様子が描かれている。
<門倉貴史著『不倫経済学(ベスト新書)』より抜粋>