4.2億人近い糖尿病患者が存在する現在! 町工場が患者を救う!? 超極細の痛くない注射針
糖尿病治療に革新を起こす小さな大発明
小さな大発明は東京の町工場から生まれた
糖尿病患者は世界で4億2200万人にものぼり、今後20年間で1・5倍にまで増加すると予測されています。
患者の多くは、治療のために毎日インスリン注射を欠かすことができず、日々、注射の辛い痛みに耐えなければなりません。
この治療に劇的な変化をもたらしたのが、痛くない注射針「ナノパス33」でした。
この画期的な注射針を開発したのは、東京の町工場「岡野工業」。
金型製造とプレス加工を専門とする、従業員数人の小規模な町工場です。
じつは、従来のインスリン注射用の注射針は、細いパイプ状の金属を引き延ばしてつくります。
そのため、直径0・4ミリほどまでしか細くできませんでした。そして注射の痛みのひとつの原因は、この針の太さにありました。
そこで社長の岡野氏は、1枚の金属を丸めて針状にするという超技術で、それまでの太さの半分、直径が0・2ミリという極細の注射針を開発したのです。
さらにこの針には、もうひとつ革新的な仕掛けがありました。
根本から先端にいくほど細くなる「テーパー形状」の実現です。
この形状により、薬液が針の中を通る際の抵抗がぐっと減り、薬液を無理に流し込まないため痛くなりにくくなったのです。
こうした痛みの軽減は、患者のクオリティオブライフ(患者の生活を向上させてストレスのない生活を取り戻そう、という考え方) が重視される昨今の医療界で、とてつもなく大きなトピックでした。
そして、2005年に発売されたナノパス33は、即人気商品となり、生産累計は何と5億本以上を記録。
多くの糖尿病患者を痛みから解放したのです。
なお、2012年には、針先を直径0・18ミリにまで細くした「ナノパスニードルⅡ」が発売されています。
より細くなったのですから、こちらももちろん大好評で、国内のほかドイツ、イタリア、中国など世界中に輸出されています。