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長旅で疲弊したロシア艦隊
戦う前からハンディを背負う

日露戦争の真実 日本海海戦の戦略を読み解く 第2回

 第2太平洋艦隊は11月はじめ、喜望峰を回る本隊と、喫水が浅くスエズ運河を通れる軍艦から成る支隊とに分かれて航行。1905年1月9日、マダガスカル島北西部のノシベ島で合流した。

 この間、旅順港内の艦隊は壊滅、守備隊も降伏していた。ロジェストウェンスキーは精鋭部隊だけでウラジオストックへ向かわせてくれるように本国へ要請したが、ニコライ2世は「増援部隊を待って日本艦隊を殲滅せよ」と命じた。

 増援部隊といってもバルト海に残っているのは老朽艦である。黒海艦隊はイギリスの圧力で遠征ができない。艦隊内では熱帯独特の気候で伝染病や野菜不足による壊血病が蔓延している。将兵の間に厭戦気分が広がった。

 増援部隊の第3太平洋艦隊は2月16日、リバウ港を出港。待ちくたびれた第2太平洋艦隊は3月16日、ノシベ島を後にした。艦底には牡蠣殻やフジツボなどが付着し、航行の妨げとなった。

 両艦隊はフランス領インドシナ(現・ベトナム)で合流。5月14日、史上最大の艦隊は北上を開始したが、これまでの長旅で疲弊しきっており、戦う前から大きなハンディを背負っていた。

日本海海戦を生き残ったバルチック艦隊所属の巡洋艦アウロラ

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松田 十刻

まつだ じゅっこく

1955年、岩手県生まれ。立教大学文学部卒業。盛岡タイムス、岩手日日新聞記者、「地方公論」編集人を経て執筆活動に入る。著書に「紫電改よ、永遠なれ」(新人物文庫)、「山口多聞」(光人社)、「撃墜王坂井三郎」(PHP文庫)など。


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