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日本を「侵略の罪」で裁いていた連合国が、まったく同じときに東南アジアで侵略戦争を行っていた

米国人弁護士が「断罪」東京裁判という茶番 第6回

東京裁判開廷70年。「米国人弁護士が『断罪』東京裁判という茶番」を上梓、来日から40年日本を愛し、知り尽くしたケント・ギルバート氏が米国人の視点からみた東京裁判について論じていく。

 東京裁判で、日本が侵略の罪で裁かれていたちょうどおなじ時期、フランス軍は、日本軍が植民地から解放したベトナムを、再び植民地にしようと戻ってきて、ベトナム独立軍と戦っていた。

靖国神社にて 撮影・末松正義

    現在のベトナム、ラオス、カンボジアの地域は、戦前は『フランス領インドシナ(仏印)と呼ばれていた。
 一方、戦前は『オランダ領インドネシア(蘭印)』だったインドネシアにも、オランダ軍が戻ってきた。しかし、オランダ軍だけでは兵力が足りなかったので、イギリス軍の援けを借りた。つまり、イギリスとオランダの連合軍がインドネシアに再侵攻し、インドネシア独立軍との戦争を戦ったのだ。
 日本を「侵略の罪」で裁いていた連合国が、そのまったく同じときに、東南アジアで侵略戦争を行っていたのである。

 東京裁判については、日本の多くの国民が「あれは、日本が悪事をはたらいたから、当然の報いとして裁かれた」と、思っているが、完全な間違いである。東京裁判は法治主義の根本を無視した、ペテンの茶番劇だ。
 インドのラダ・ビノード・パル(Radhabinod Pal)判事は、日本無罪論を判決書として提出した。
 十一人の東京裁判の判事の中で、三人が反対意見を提出した。その中で「日本は完全に無罪だ」と、説いたのは、インドのパル判事だけだった。
 実は、この十一人の判事の中で、国際法の専門家は、パル判事だけだった。あとは全員が国際法に関して、素人ばかりだった。

 オランダのベルナード・レーリンク(Benard Victor Aloysius (Bent) Roling)という、十一人の中でもっとも若い判事がいて、このレーリンクも、日本が一方的に悪かったわけではなかったとの反対意見を出している。
 レーリンクは、回想録を残しているが、その中で、泊まっていた帝国ホテルから市ヶ谷の法廷にバスで行くとき、毎日、連合国の壮大な戦争犯罪の現場、つまり、東京が焼け野原となっていたのを、往復のバスの中から見て、「これほど気の重いことはなかった」と、述べている。

 そして、日本が先の大戦を戦った一番の理由として、「白人諸国が、日本人をはじめ有色人種に対して、理不尽な人種差別を行ったことであった」と、日本を擁護している。
 もうひとりが、フランスのアンリ・ベルナールという判事だった。
 非常に滑稽なことだが、東京裁判は、英語と日本語で行われていた。同時通訳が行われ、英語は日本語に、日本語は英語にするという仕組みになっていたが、ベルナール判事は、ひとことも英語がわからなかった。日本語は言うまでもない。さぞかし忍耐強い人だったのだろう、何が語られているか、まったくわからないまま判事席の壇上にいた。
 ベルナールも回想録を書いているが、自分は毎日、法廷が開かれている間は、何を言っているのかまったくわからず、二日後に、フランス語への翻訳を、フランスの代表部が作ってくれたものを読んで、ようやく何が行われているのかを理解していたという。
 占領下では、マッカーサー司令部が、厳しい言論統制を行っていたから、パル判決書も発表されなかった。ベルナール判事、レーリンク判事の判決書も、公表されることはなかった。

 朝日新聞は、東京裁判が開廷した二年半後、東條大将ら七人が犠牲となって絞首刑に処せられた時に、社説で「この裁判は、きわめて公平に行われ、東條大将以下の処刑も、そこには報復の意図がいささかもない厳粛なものであった」と書いている。
 まったく酷い報道だ。保身のための事大主義である。同じ日本人が、よくはずかしげもなく書けたものだと思う。

 しかし、当時は朝日だけでなく、毎日も読売も、よくぞここまで卑屈になれると思うような記事で埋まっていた。そうしなければ、GHQから業務停止命令を受けるからだ。
「戦争犯罪人」は、A級、B級、C級に分けられていた。B級、C級でも千人以上が処刑されている。これは捕虜を虐待したとか、捕虜を処刑したとか、いろいろあるが、このBC級裁判も、公正なものではまったくなかった。

 戦後、米国は日本を占領している間に、日本のマスメディアや、教育を通じて、徹底的な情報操作による洗脳、マインドコントロールを行った。だから、この辺りの事情を何も知らない、日本人が圧倒的多数なのだ。
 日米間の戦争は三年半あまりしか続いていないのに、日本に対する占領は、その二倍の時間をかけている。そして、その悪影響は、戦後七十年以上が経過した現在も続いている。日本のメディアも教育も、占領中から何も変わっていない。まったく異常なことだ。

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ケント・ギルバート

1952年、アイダホ州に生まれる。1970年、ブリガムヤング大学に入学。翌1971年に初来日。その後、国際法律事務所に就職し、企業への法律コンサルタントとして再来日。弁護士業と並行してテレビに出演。2015年、公益財団法人アパ日本再興財団による『第8回「真の近現代史観」懸賞論文』の最優秀藤誠志賞を受賞。著書に『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』、『中華思想を妄信する中国人と韓国人の悲劇』(ともに講談社+α新書)、『リベラルの毒に侵された日米の憂鬱』(PHP新書)、『日本人だけが知らない世界から尊敬される日本人』(SB新書)、『米国人弁護士が「断罪」東京裁判という茶番』(小社刊)などがある。


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  • ケント・ギルバート
  • 2016.12.16