東葉高速鉄道と山万ユーカリが丘線に乗る
「公園」駅に「女子大」駅…「こあら2号」でぐるり
東京メトロ東西線と東葉高速鉄道が相互直通運転を始めて20年経ったのを記念した特別展が東京・葛西にある地下鉄博物館で先日まで開かれていた。地下鉄車内の中吊り広告で知ったので、展覧会の終盤に訪れたのであるが、そういえば東葉高速鉄道は一度乗ったきりだった。それも所用の帰りに往路と同じ京成電鉄利用では面白くないからと使ってみたのだが、夜だったので車窓は見ていない。何だか運賃が随分高かったことだけが記憶に残っていた。
というわけで、特別展を見てから、時間がたっぷりあったので、そのまま東葉高速鉄道に乗りに行くことにした。葛西から乗った東西線の電車は西船橋止まりだったので、東西線の終点であり東葉高速鉄道の起点でもある西船橋で東西線からの直通電車を待った。
すぐに東葉勝田台行きはやってきた。乗りこむと電車はすぐに地下に潜る。東海神駅に停まった後、再び地上に出ると飯山満駅に到着した。「いいやま・みつる」という人名みたいな駅名だが、これで「はさま」と読む。難読駅として有名なところだが、どんな場所なのか見るために降りてみることにした。
飯山満は高架駅で、駅前にはロータリーがある。正面には5~6階建のマンションが立っていて1階がショッピングモールになっているようだ。左前方は空き地が広がり、遥かかなたにマンション群が見えた。駅前にしては建物がまばらだし、昼下がりだったせいもあり、閑散としていた。ロータリーで客待ちをしているタクシーの運転手も二人暇を持て余して雑談中だった。
ホームに戻る。昼間は、きっちり15分間隔だ。のんびり散策するには、これくらいの間合いがちょうどいい。飯山満を出ると再び地下にもぐって新京成線との乗換駅北習志野に停まる。「きたならしい(汚らしい)の」と聞こえたので、車内からホームを見たが、いたって小奇麗な駅だった。そのまま地下を走り船橋日大前に停車。さきほどの特別展では、駅舎を日大建築学科の先生が設計したと説明していたので、どんな駅なのかと、ここでも降りてみることにした。
地下ホームから日大方面という案内に従って地上に出ると、天井が高く、大きな吹き抜けのある洒落た駅だ。駅前はロータリーになっていて、左手には日大理工学部などのキャンパスが広がっていた。まだ冬休み中だったせいで人影はまばら。ロータリーをぐるっと回りながら駅舎を眺めると、工夫を凝らした建築であることが分かる。建築関係の賞を2つほどもらった実績があり、関東の駅百選にも選ばれているそうだ。
さらに先を目指す。船橋日大前を発車すると同時に地上に顔を出し、電車は高架線を快走する。まわりはマンションや瀟洒な一戸建て住宅が並び、いかにもニュータウンを走る鉄道という感じである。車両基地のある八千代緑が丘駅を過ぎ、八千代中央駅と八千代という駅名が続き、乗りなれないと紛らわしい。
川を渡り、村上駅を過ぎると、最後は地下にもぐって東葉勝田台に到着した。西船橋から通しなら21分、その一方で運賃は630円もかかる。2ヶ所で途中下車したから、合計で1010円も払うことになった。やはり高額な運賃である。
というわけで、帰りは隣接する勝田台から京成線に乗ろうと京成の乗り場に向かい、どこを通るのかなと路線図を見てみたら、2つ先のユーカリが丘駅から出ている山万ユーカリが丘線というのが気になった。乗ったこともないので、ついでだからとユーカリが丘駅に向かった。
山万ユーカリが丘線というのは、不動産会社が運営する新交通システムであり、一応鉄道の範疇なのだ。京成電鉄に隣接した駅から、住宅地の中を「しゃもじ」かラケットのような形のルートでまわる路線である。夕方までそれほど時間があるわけではないので、ぐるっと回るだけにしようと思った。はて、ぐるっと一周すると運賃はどうなるのかな?めんどうなことにならなければいいのにと券売機を見たら、全線均一200円と分かって安心した。
スイカやパスモなどのICカード乗車券は使えないので、きっぷを買ってホームに上がると、3両編成の列車がやってきた。車体にコアラのイラストが描かれ「こあら2号」という。ユーカリヶ丘だから、ユーカリにちなんでコアラなのだ。
軌道の真ん中にレールが1本敷いてあるモノレールのようなシステムだ。小ぶりの車両で車内は狭い。ほどほどの客を乗せて出発。高いところを走るので見晴らしは良い。2つ目の駅は「公園」。○○公園とすればいいものを単に公園とはぶっきらぼうだ。ここで路線が二手に分かれるが、列車は一方向にしか進まないので、単線ですれ違いもなく、公園駅を出る列車は、すべて右手に進み、ぐるっとまわって左手の線路から公園駅に戻ってくる仕組みだ。次は女子大駅、さらに中学校駅と学校名がないのが変わっている。女子大と言っても、誘致に失敗したのか、大学のキャンパスはなく和洋女子大セミナーハウスがあるのみ。華やいだ雰囲気の感じられない駅だった。15分足らずでユーカリが丘駅に戻ってきた。列車は、今度は進行方向を逆にして出発していく。昼間は20分毎の運転で、のんびりムードだった。途中にトンネルもあり、中々変化に富んだ道中だ。
かくして、馴染みのない鉄道に2つ乗り、これにて千葉の鉄道は、JR、私鉄を含めてすべて制覇したこととなった。めでたし、めでたし。
野田隆『大人の「こだわり」乗り鉄の旅』