2体いる狛犬はそれぞれ別の生き物だった
向かって左側はイヌだが右側は……
神社の動物像に込められた重要な意味
神使でわかる神社の特徴とは
「神社の境内にある狛犬やいろいろな動物の像にも、ぜひ注目してほしいですね」と、國學院大學神道文化学部准教授の藤本頼生さんは語る(『一個人』2017年1月号取材時)。
神社にある狛犬は、邪気を祓い、神前を守護するものだ。多くは拝殿の手前や参道の入り口の両側に、雌雄一対の形で鎮座する。日本に最初に入ってきたのは、京都御所にある紫宸殿(ししんでん)の賢聖障子(襖)といわれている。
「もともとは襖の絵に描かれたものでしたが、やがて木や石で彫られたり、陶製などになり、鎌倉時代から神社に置かれるのが一般的になったようです。武家の隆盛により、神社を崇敬する武将が増え、社殿と共に狛犬も寄進されるようになったのではないかと考えられます」。
一般的に両方合わせて狛犬と呼ばれるが、2体は別々の想像上の動物。向かって右側が獅子、左側が狛犬だ。
「簡単に画像が手に入らない時代、古代オリエントのライオンの話を聞いた彫師たちが想像を巡らせて作ったユニークな狛犬がたくさんあります」。
口を開けて吠えている獅子と口を閉じている狛犬は、一対で「阿吽」の形とされる。「阿」はサンスクリット語の最初の音、「吽」は最後の音で、宇宙の始まりと終わりを示す。
神使や眷属と呼ばれる動物の存在も、神社を訪れる楽しみの一つだ。
「それぞれの神社で大事にしているものが違いますので、神使を知るだけでも神社の特徴がわかってきます。狛犬の代わりにサルなら、この神社は比叡山や日吉神社、日枝神社の関係だなとか、オオカミなら日本武尊を祀っている神社だとか。靖国神社には、戦争で大切にされたウマやイヌの慰霊像があります」。
和歌山県熊野三山の守り神である八咫烏は有名。また、山梨県の甲斐國一宮浅間神社には、十二支全部の神使がある。神社を巡り、お気に入りの神使を見つけるのも一興だ。
[狛犬]大陸から伝来した神社の守護者
起源は、インドやエジプト。それが唐(中国)から朝鮮半島の高麗を経て日本に伝わったのが「高麗犬」で、後に「狛犬」と書かれるようになった。また、鎌倉時代に宋(中国)から伝わったものは「(唐)獅子」と呼ばれている。
[神使]神様の意思を伝える使者
人々に神様の意思を伝えると考えられている神の使者。「眷属(けんぞく)」とも呼ばれる。多くは実在の鳥獣、虫、魚などで、イノシシ、ネズミ、ウサギなど干支の動物やカエル、ナマズ、タイ、カニ、ハト、ツルとさまざま。鳳凰、龍など想像上の生き物の場合もある。