甦ったレスターの秘密と岡崎慎司。「“守備的FW”としての成熟、FWとしての不満」
レスターが昨季の強さを取り戻した。日本代表ストライカーの貢献とは
レスターに戻ってきた「奇跡の姿」
4月5日イングランド・レスターにあるキングパワースタジアム。プレミアリーグ最下位サンダーランドを迎えた一戦で、レスターは2-0と勝利。2月の監督交代後、リーグ戦5連勝をマークし一時は残留争い圏内に突入いていた順位も11位まで浮上した。後半途中でベンチに退いた岡崎慎司だったが、彼は今日も与えられた仕事をしっかりとまっとうした。ゴールは決められなかったけれど、チームの勝利に貢献している。
岡崎は監督交代を機に先発の座に返り咲いた。
豊富な運動量と献身的な守備で、昨季の「奇跡のリーグ優勝」を支えた岡崎だったが、今季序盤は出場機会が激減していた。前任監督のラニエリは、新しく獲得した長身ストライカー・スリマニを中心に、レスターのサッカーを改革しようと考えたのだろう。しかし、その改革は失敗に終わり、チームは迷走と低迷という負の連鎖に陥った。
2月23日、チャンピオンズリーグラウンド16ファーストレグ。アウェーでのセビージャ戦、岡崎はベンチ入りしたもの出場機会は訪れなかった。
「次はもう、ベンチ入りも出来ないだろう」
そのときに思った、と岡崎はのちに振り返った。
しかし、事態は急変する。優勝監督でもあったラニエリの解任が決まるのだ。暫定監督は長くチームでアシスタントコーチを務めてきたシェークスピア。まず、彼がおこなったのが、岡崎を先発メンバーに戻すことだった。直後の2月28日のリバプール戦、ハル戦と連勝し、セビージャをホームに迎えたチャンピオンズリーグが行われる。ファーストレグは2-1だったため、レスターが勝ち抜く条件は勝利しかない。
収容人数3万人あまりというキング・パワースタジアムがぎっしりと人で埋まる。キックオフ前には、レスターカラーのフラッグが振られ、青と白で染められたスタジアムに選手たちが登場する。もちろん岡崎もそこにいた。
スペインリーグの中でも高い技術力を誇るセビージャは、ショートパスを繋いで攻める特長があった。かたやレスターは、前線から相手に激しくプレスをかけて、ボール奪取し、そこから速い攻撃でゴールを仕留めるチームだ。
プレミアリーグのスタジアムでは、他の国のスタジアムで見られるような、熱狂的なサポーター集団がゴール裏を陣取るという光景はほとんど見られない。観客は座って観戦する。とはいえ、この国のスタジアムでも歌やチャントは欠かせない。誰かが歌い、叫ぶ。それがじわじわとスタンドに広まっていくのが、イングランドスタイルなのだ。試合中ずっと声が響いているということは稀で、状況によっては、水を打ったような静けさがスタジアムを覆うこともある。
この日もそうだった。
ルーズボールをどちらの選手が奪うのか?
敵が自陣に攻め込んでくるとき。
観客は、文字通り固唾をのんで試合を見守る――スタジアムは静寂に似た緊張感を発するのだ。
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