世田谷線でぶらり散歩
環七で信号待ち。のんびりと住宅街を縫うように走る路面電車
久しぶりに東急世田谷線に乗ってみた。たまたま三軒茶屋に用があったついでに、最近行っているセミナーでの話のネタ探しをしていたこともあり、世田谷線乗り場に足が向いたのである。乗り場はキャロットタワーという高層ビルの1階にあった。そういえば、そのビルの26階にある展望ロビーに上ったことがなかったので、改札口を通る前に、少しだけ寄ってみた。
展望ロビーからは周囲の街並みがよく見えた。住宅地なので、それほど高層ビルは林立していない。世田谷線は見えるかな、と探してみると、小ぶりな電車がトコトコ走っているのが目に入った。さて、ぐずぐずしていたら電車に乗らないで終わってしまいそうなので、早々に地上に戻り、「世田谷線散策きっぷ」という一日乗り放題のフリーパスを買ってホームに出た。それにしても、きっぷは330円。1回乗ると150円(ICカードなら144円)だから、3回乗ればトクになってしまう割安きっぷである。
世田谷線の三軒茶屋駅は、行き止まりの線路が1本だけで、その両側にホームがあるごく小さな造りだ。にもかかわらず、ドームで覆われ、どこかヨーロッパのターミナル駅を思い起こす雰囲気があり、個人的には好みの駅である。そんなことを考えているうちに電車が到着したので、すでに並んでいた人たちの後に続いて乗りこんだ。
車内は、狭いながらもクロスシートになっている。2両編成の車内はいずれも運転台の方を向いて座る。つまり、先頭車両は前向きに、後部車両は後ろ向きに座るということだ。クロスシートと言っても一人掛けで、一つの席をのぞいて、向かい合わせにはなっていない。そういえば、路線バスのような座席配置である。
狭いながらもクロスシートというのは旅気分になれて嬉しいものである。路面電車スタイルの車両は、ゴトゴトと実にのんびりと住宅地の間を縫うように走る。都内の鉄道は、高架区間や地下にもぐってしまった区間が多いだけに、昔ながらの地上区間、それも線路際まで住宅がぎっしり立て込んでいるのは、今となっては貴重だと思う。
西太子堂駅に停車し、2つめの若林駅の手前で停車。ここは交通量の多い「環七」という道路が横切っているのだが、警報機も遮断機もなく、電車優先ではないというのが珍しい。一旦停止した後、道路の信号が青になったのに合わせて電車が道路を横断するしきたりである。「若林踏切」という名所になっていて、世田谷線が路面電車である証なのだ。
松陰神社は、2年ほど前に立寄ったことがあったので、この日は、松陰神社前駅を素通りし、世田谷駅、車庫のある上町駅も無視して、宮の坂駅で降りてみた。駅の近くにあるという豪徳寺に行ってみたかったのである。ホームの脇には、かなり前に下車したときと変わらず、古い緑色の電車が置いてあった。世田谷線が玉電と呼ばれた時代に活躍し、その後、江ノ電に移り、引退後古巣に戻ってきた車両だ。この日は、さっと車体を撮影するだけにして、踏切を渡って、豪徳寺を目指した。
左手の小高い丘のあたりに緑の木立で覆われた場所があるので、豪徳寺だと見当をつけて坂を登ってみた。確かに突きあたりが豪徳寺のようだが入口が見当たらない。勘を働かせて右手に歩いていくと、やっと山門が見つかった。踏切の道をもう少し歩いていれば、看板と参道があって迷うことはなかったのである。
境内は思った以上に広く、まずは、彦根藩井伊家の菩提寺ということで墓所に行ってみた。訪問客が多いようで、案内図もある。それに従って歩いて行くと、奥まったところに桜田門外の変で暗殺された井伊直弼の墓が見つかった。有名な人だけあって、立派なお墓である。一応手を合わせてから次に進む。
墓所を出た先で、人が何人も左側に進んでいくので、後に続くと、そこが有名な招き猫が沢山置いてあるスポットだった。所狭しとばかり、大小無数の同じようなポーズの招き猫がぎっしり並んでいる。これだけの数の猫の置物を目にすると、目が眩みそうだ。
その後は、本堂にお参りし、記念に招き猫のお守りを買って、駅に戻った。電車がやってきたのでカメラを構えたら、たまたま近くにいた電車待ちの女性もスマホを向ける。採り終わったらお互い笑顔でにこっとして電車に乗り込んだ。写真を撮っても全く違和感がないのどかな雰囲気の駅である。
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