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「危険察知能力」でゴールを防ぐ。言葉に隠された本質

鈴木啓太氏引退試合に思う

岩政大樹・現役目線第26回

危険察知能力が高い、と言われて活躍した鈴木啓太さん。

失点はしない、という前提

 先日、鈴木啓太さんの引退試合に参加させていただきました。
 鈴木啓太さんといえば、「危険察知能力」。危ない場面にいつも顔を出し、ピンチを未然に防いでいく姿は敵として厄介極まりない選手でした。
 今回は、この「危険察知能力」という言葉について少し立ち止まって考えてみたいと思います。

 危険察知能力。
 サッカーの世界で度々、守備の選手がピンチを防いだ場面で使われる言葉ですが、僕の感覚では少し表現がしっくりきません。聞き慣れてしまっている言葉ですが、「危ない」と思った時にピンチを防ぐのは、危険を察知する能力ではありません。特にプロの世界ではそうだと思います。

 どういうことか説明しましょう。
 サッカーとはご存じのとおり、得点がなかなか入らないスポーツです。これを逆から考えれば、サッカーはなかなか失点をしないスポーツと言えます。
 つまり、守備をする者からすると、ほとんどの場面で「やられてしまう」ということはありません。
 だから、正しいポジションを取っていなくても、あるいは、必死に守らなくても、それが毎回失点に直結するわけではありません。

 そのことによって起こるのが、「正しいポジションを取らなくても今回は大丈夫だろう」とか、「必死に守らなくても大丈夫だろう」という心理です。サッカーにおいては、どちらかと言えば、その心理の方が当たり前だったりします。つまり人はどうしても可能性を頭に入れてプレーするので、失点の確率が低いことから、サボるとも少し違うのですが「~だろう」というプレーになりがちなのです。

 僕は、サッカーの守備は車の運転によく似ていると思います。
 運転免許の講習の時に、「『~だろう』運転はだめ、『~かもしれない』運転を心がけよう」と教わります。運転の時、携帯電話を見てしまうことや注意を怠ることは危ないことだと誰もが知っているのに、事故はそれほど頻繁に起こるわけではないことから、ふとしたときに「大丈夫だろう」と考えてしまいます。そして、そういう時に限って、危ない場面に出くわします。

 
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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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  • 岩政大樹
  • 2017.09.19