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歌川国芳が「猫」を通して描いた江戸文化

言葉遊びやキュートなしぐさが満載! 江戸後期に華を添えた「猫浮世絵」

歌川国芳は大の猫好き

写真を拡大 「其まま地口猫飼好五十三疋」イメージイラスト

 江戸時代の後期には、化政文化といわれる町人文化が栄えた。現代でも評価の高い浮世絵が数多く誕生し、役者の似顔絵で人気を博した歌川豊国や、その弟子たちの活躍が目覚しい時代でもある。

 豊国の弟子のひとりである歌川国芳は、『通俗水滸伝豪傑百八人』により武者絵の名手として知られるようになる。ほかにも、『東都富士見三十六景』や『遊女図』など、さまざまなジャンルの浮世絵を手がけているが、そのなかでも“猫”にまつわる作品が印象深い。

 国芳は大の猫好きで知られる絵師。作品にもたびたび登場するが、猫を主役としたものは現代でも愛猫家たちの心をわしづかみにしている。愛猫家ならではの視点で描かれたリアルな動きや表情はもちろんだが、猫を擬人化した風刺画や、洒落がきいたものなど、猫を通して当時の町人文化が肌で感じられるようだ。

 たとえば、『其のまま地口 猫飼好五十三疋』は、猫のしぐさとともに『東海道五十三次』の宿場町名をだじゃれ風に描いたもの。起点となる日本橋には、2本の鰹節を盗み食いする猫の姿が描かれている。これは、日本橋を「2本だし」としているからだ。前足で鰹節をとらえる猫の姿がたまらない。

 

 府中のところには、鰹節に「夢中」になっている猫が、袋井には袋に顔を突っ込んでいる姿が描かれている。言葉遊びだけでなく、猫の習性に沿ったしぐさが見られるのは愛猫家ならでは。猫を愛するからこそ、こうしたユニークな作品が誕生したといえるだろう。この作品は「猫浮世絵」の代表作といえるもので、現代では手ぬぐいやマグカップなどのモチーフにもなっている。

 しゃれがきいた作品といえば、『猫の当字』も有名だ。猫の絵で文字をかたどったもので、「うなぎ」、「なまづ」など、魚の名前が描かれている。猫のしなやかな動きを楽しめるほか、当時も猫の首には鈴がつけられていたことがわかり、猫好きには興味深い作品だ。

 ほかにも、猫を擬人化して歌舞伎狂言の演目を描いた『流行猫の狂言づくし』や、言葉が隠された判じ物である『猫のおどり』など、隅々までチェックしたくなる浮世絵が目白押しである。

 雑誌『一個人』2017年12月号では、「維新150年! 謎とロマンに満ちた動乱期“幕末・維新"の時代を歩く。」と題した特集を組んでいる。幕末といえば志士たちが活躍していたが、こうした親しみやすい文化が開花した時代でもある。激動の時代だけにさまざまな分野に特徴的なトピックスがあり、歴史に苦手意識を抱く人にも興味関心のあるストーリーが見つかるだろう。

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