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「ヴェノナ文書」が示す、米ソの危険な関係

ソ連の工作員が入り込んでいたアメリカ政権 シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑥

ソ連・コミンテルンのスパイたちの交信記録である「ヴェノナ(VENONA)文書」をあなたはご存じか。『日本は誰と戦ったのか』を上梓した、江崎道朗氏が、そこに書かれていた「ソ連の工作員」の正体を明らかにする。

ホワイトハウスは乗っ取られていた!

 アメリカ政府は1995年、ソ連・コミンテルンのスパイたちの交信記録である「ヴェノナ(VENONA)文書」を公開しました。1940年から1944年にかけて、アメリカにいるソ連のスパイとソ連本国との暗号電文をアメリカ陸軍が密かに傍受し、1943年から1980年までの長期にわたってアメリカ国家安全保障局(NSA)がイギリス情報部と連携して解読した「ヴェノナ作戦」に関わる文書のことです。

 この「ヴェノナ文書」の公開とその研究によって、次のような「側近たち」がソ連の工作員であることがほぼ確定しているのです。

カバーネーム  本名            主な役職
Jurist・Ales  アルジャー・ヒス       財務長官補佐官
Lawyer    ハリー・デクスター・ホワイト 財務次官補
Page     ラフリン・カリー       大統領上級行政職補佐官

長年ソ連のスパイとして活動したアルジャー・ヒス

 ハリー・ホプキンスと、オーウェン・ラティモアも「ヴェノナ文書」では確認できていないだけで、アメリカの保守派からは、ソ連の「協力者」であると見なされています。

 エヴァンズ教授らに言わせれば、日米開戦前からルーズヴェルト民主党政権下のホワイトハウスは事実上、ソ連の工作員・協力者たちによって乗っ取られていたのです。

 

アメリカのカリフォルニア大学の長谷川毅教授が『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』(中央公論新社、2006年)を上梓した2002年の時点でこの「ヴェノナ文書」はすでに公開されていました。しかし、教授は国務省内部にスターリンのスパイがいたことには言及しているものの、彼ら「側近たち」がソ連の工作員・協力者であったことまでは言及していません。

 しかし、エヴァンズらは、日本の終戦が遅れたのは、ルーズヴェルト大統領とトルーマン大統領の側近であったソ連の工作員・協力者たちによる妨害工作があったからだと主張しているのです。

 この主張が事実だとするならば、日本の終戦が遅れ、広島・長崎に原爆が投下されたのは、日本政府の決断が遅れたこと「だけ」が原因ではなかったことになります。

 終戦交渉の歴史もまた、大きく書き換えられる必要があるのです。

『日本は誰と戦ったのか』より構成)

 

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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