生涯ジャンパー・船木和喜が飛び続ける理由
Q6・現役を続ける理由を教えてください。
【前回まで】
・五輪金メダリスト船木和喜が「新宿のビルで上から下まで飛び込んだ」理由
■あの環境にもう一度戻ってみたいから、今なお一生懸命やっている
――欧州では「生涯ジャンパー」も少なくないとか。
船木 特に北欧は多いですね。趣味の範囲でやっていて、町民大会などに出場して楽しんでいます。僕もスポーツマネージメント会社を立ち上げて独立してやっていますから、誰かに肩を叩かれることもない。誰にも決める権利はないし、もう一年、もう一年と思ってやってきていますが、別に引退しなくていいんじゃないかって思っています。
――どういったところがジャンプの魅力なのでしょうか?
船木 当然ですけどジャンプして下に落ちていくので、いろんな技術を使ってできるだけ飛んでいられるように工夫する。やっぱり距離を飛ぶと気持ちいいです。その気持ちは始めたころとあまり変わらないというか、今を一番楽しめて飛んでいるというか。
それと魅力という部分では、危ない競技に思えるかもしれないけど、凄い安全な競技でもあるんです。もちろん骨折とかケガは付きものですけどね。安全な競技であることを、もっと広く知っていただきたいですね。
――ワールドカップに出場すると、海外を転戦することになります。船木さんの通算16勝は日本最多勝利数です。
船木 海外を回るのは楽しいですよ。同じメンバーで回っていくので、サーカスみたいな感覚です。みんな仲間ですし、競技と関係ないときはみんなでお酒を飲んでワイワイやって。
あの環境にもう一度戻ってみたいから、今なお一生懸命やっているというのはあります。昔一緒に回っていたメンバーは、国のヘッドコーチをやっていたりします。僕としては自分が選手として、もう一度会いたい。今の大きなモチベーションですね。
――世界に〝戦友〟がいるわけですね。
船木 30代後半になって海外の試合に一人で行ったとき、しばらく一緒に回っていた仲間のほとんどがコーチになっていました。僕が飛ぶ順番になったら、その30人ぐらいが飛ぶ合図でニコニコしながら旗を挙げてくれるんです。いろんな国のコーチが一斉に。
わっ、見られてると思うと、もう笑っちゃって飛べなかったです。ジャンプして失敗すると、あの人たち喜んでるんですよ。この野郎って思いましたね。本当に素晴らしい仲間たちです。