北海道の近代を開いた最古の鉄道 国鉄手宮線【前編】
ぶらり大人の廃線旅 第23回
■西南戦争が終わって3年後に開業した鉄道
小樽の手宮から植民地の首都・札幌を結ぶ鉄道が開業したのがこの明治13(1880)年であった。この鉄道は2年後の同15年に岩見沢を経由して石狩炭田の幌内まで延伸し、これにより石炭を積出港の小樽・手宮へ運ぶ近代ルートを完成させている。いわゆる官営幌内鉄道である。ちなみに最初の開業年である明治13年の時点で国内に存在した鉄道といえば、他に新橋~横浜(現桜木町)間と大津(後の浜大津)~京都~大阪~神戸間だけなので、明治新政府の北海道にかける意気込みの程が窺える。
明治13年(1880)といえば西南戦争が終わってまだ3年、近代国家を目指して矢継ぎ早に各方面の政策が打ち出されていた時分である。特にその前年に行われた「琉球処分」などは、大袈裟に言えば卑弥呼以来ずっと続いてきた中国(清朝)を中心とする華夷秩序からの離脱を意味し、それまでの東アジアを統御してきた体系を根底から覆す、まさに日本の西欧的近代化を象徴する出来事であった。その反対側に位置する北方でも、「北海道」の名が与えられたばかりの旧蝦夷地が、大日本帝国の植民地として経営が着々と進められていた時期である。