「ハリルホジッチ監督解任」で煽られる「是非論」に告ぐ。
ハリルホジッチ監督に足りなかったものと、今、我々に足りていないもの
岩政大樹「現役目線」第35回
■メンバー選考1カ月半前の解任
ハリルホジッチ監督が解任されました。
「ワールドカップ2ヶ月前」と言われていますが、選手たちからすればメンバー発表まで1ヶ月弱しかありません。その間に代表チームの活動はなく、選手たちにとっては小さい頃からの夢で、人生を変えると言っても過言ではない大舞台への挑戦権は、突然霧の中となりました。だからといって、やるべきことが変わるわけではありませんが、今回のメンバー発表の裏ではいろんな人の、いろんな感情が動かされる気がしてなりません。
ハリルホジッチ監督のやりたかったことは何だったのか。この解任でそれを知ることはできなくなりました。僕は選手たちに内情を聞くことは控えているので、実際にチーム内で何が起きていたのかはわかりません。僕にある情報は、この3年間の日本代表の試合映像だけ。
ワールドカップを終えて初めて総括ができると思っていましたが、それは叶わなくなってしまったので、今ある僕の頭の中で振り返って未来に繋げたいと思います。
ハリルホジッチ監督のやり方は非常に興味深く見ていました。「デュエル」という言葉を盛んに使い、一対一の決闘に選手たちの目を向けさせました。攻撃は縦に速く。激しい守備から奪ったボールを前に素早く運び、相手の陣形が整う前に攻め切る。示した「絵」は明確でした。
この「絵」自体は目新しいものではありません。現代サッカーにおいてはスタンダードともいえる戦い方で、日本にとって「デュエル」「縦に速い攻め」ともに世界と伍するには決定的に足りないものですから、それを明確に取り入れてチームの根幹に”まず”据えることには説得力がありました。ましてや、ブラジルワールドカップで「自分たちのサッカー」という言葉の元に「相手」を見失っていた日本代表にとって、相手が嫌がるプレーを増やすことは必要不可欠でした。
ただ、当初僕はそれを”まず”であるものだと思っていました。
アジアを勝ち抜く戦いにおいてもアジアで勝つためのサッカーをするのではなく、ワールドカップを見据えた上で“まず”日本に決定的に足りない部分を強調しながら注入していき、最終的にワールドカップを戦う前に日本の良さをどのくらい出していけるのかを見極めながら微調整してバランスを整えていく。そんなプランを描いているのだろうと想像していました。
しかし、ここまでのハリルホジッチ監督は次へのステップを見せることはなく、むしろ、そのまま“日本に足りないもの”で世界に勝負に出ようとしているようでした。
選手たちからすると、徐々にそのバランスの落としどころをチームで見つけていくはずだったものが一向に示されず、頑なに拒否され続けたために疑心暗鬼になり、信頼関係が崩れたのではないかと想像できます。
特に、個人的には「デュエル」に挑む手法には疑問がありました。つまり、選手たちのポジショニングと頭の回し方です。
- 1
- 2