孤独と戦える男・上原浩治。そのすごさを物語るエピソード
BEST TIMES世代の憧れ、そのすごさの秘密とは
■記憶に残る一戦にみた上原浩治のすごさ
4月5日のドラゴンズ対ジャイアンツ戦は、たまらない試合だった。
ドラゴンズの先発が松坂大輔。ジャイアンツの8回を締めたのは上原浩治。約20年前、1999年のセ・パ新人王と最多勝投手が同じマウンドに立ったのだ。
そして上原浩治投手は圧巻だった。
テンポよく投げ込むスタイルは健在。投じた23球、エラーで出塁を許した4人の打者すべてで初球をストライク。ボール球は7球しかない。
これで開幕して6試合ですでに4試合に登板。(この計算が無意味なものだとは承知で)シーズンをとおせば90試合以上に登板するペースだ。
なによりすごいのはチームに合流してから1カ月も経っていないのにこれだけのコンディション、結果を残す点だ(正式入団は3月9日)。日本であれば2月1日から、アメリカでも2月の中旬にはチームに合流し、足並みをそろえてオープン戦に向かい、シーズンを通した戦いに備えるのが一般的である。
しかし今シーズン、去就が決まらなかった上原投手には通常であるべき「1カ月」が存在しなかった――。
ただこれができるのは「上原浩治」だからに他ならないと思う。
上原投手を語るとき、実績や数字はもちろんだが、準備に対する貪欲さを欠かしてはいけない。例えばそれはシーズンに入る前の「自主トレ」を見ればわかる。
「きつそう……」
はじめて上原投手の自主トレを取材したときそう思った。何を当たり前のことを言うのだ、と思われるかもしれないが、きつさというのも単純にトレーニングがきついだけではない。孤独なのだ。