安室奈美恵は“ゴーヤチャンプルー”のイメージを一変させた。
安室奈美恵さんの引退を沖縄から見た。
■“罰ゲーム”扱いされていたゴーヤチャンプルー
私は、沖縄生まれ沖縄育ちだが、父親の仕事の都合で中学生の多感な時期は、県外で暮らしていた。当時「沖縄の出身だから」というだけで、ちょっとした差別に似たようなものを受けることもあった。現在30代後半の私は、そんな経験をした最後の世代ではないだろうか。
私が中学生だった、今から約20年近く前。沖縄に来る観光客は口をそろえて「ごはんがまずい」と言ったものだ。ゴーヤチャンプルーなどは、東京で放送されるバラエティー番組では“罰ゲーム”で食べさせられる定番の料理だった。
しかしそれから数年後に安室奈美恵さんが鮮烈なデビューを果たすと、沖縄ブームがおき沖縄を取り巻く様々な状況が一変した。これまであった差別が嘘のようになくなった。それどころか上京した際に、沖縄出身だということを明かすと、羨望のまなざしをむけられるようになったのだ。
ゴーヤチャンプルーも、安室奈美恵さんが「ゴーヤが大好物」とテレビで公言するようになってからは、「沖縄でゴーヤチャンプルーを食べたんだけど、とてもおいしかったよ」と満面の笑みで言われるようになった。
私たち世代の沖縄県民にとっての安室奈美恵さんは、単なるアーティストではなく、まさに「HERO」(安室奈美恵さんのシングル曲名)であった。