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皇帝の「ミイラ」を利用した領地拡大の戦術と滅亡 ~永遠に生き続けたインカ皇帝~

死後も宮殿で君臨し続けたミイラ皇帝たち

■皇帝ミイラを利用した領地拡大の戦術と滅亡

 エジプト同様に、インカ帝国でも王たちのミイラは高度な製作技術で作られていた。人々にとって神にも等しい存在の国王は、死者となった後にも生きている時と同じく、そのまま権勢を誇っていた。侵入して来たスペイン人たちはその文化を恐れた。文字が残っていないため、ミイラの背景にある思想的・宗教的背景ははっきりとわかっていない。しかし、「遺体を保存し、生きているように訪問して敬う」という先祖崇拝の一つの在り方として理解することができる。

 

■薬草研究が盛んなインカ ミイラ作りにも応用された

 イロの海岸地帯などで発見される一般ミイラに比べて、やはりインカ帝国の王たちにはエジプト同様高度なミイラ作りの技術が応用されていた。

 しかし文字文化を持たないアンデスでは、それらの記録は全てスペインから来た年代記者などによって記録されたものが手がかりとなっている。

 まず腹を切り裂いて内臓を取り出す。摘出された内臓は香料をまぶし、ファコと呼ばれる葬儀用の入れ物に収納され、クスコ郊外のタンプという寺に納められた。そして植物から採った芳香剤や香水、タロ芋の皮などを腹の中に詰め込んだ。

 また口から腹の中に香料を流し込み、それから特別の発汗室に入れ、太陽熱に当てたり熱風を送り込んで乾燥させたと伝えられる。

 アンデスでは薬草知識が進んでいたので、薬草の様々な効能を利用したと考えられる。特に皮膚を美しく保つ保存技術があったようで、年代記者たちはそれを「まるで生きているよう」と称賛した。

 しかし残念ながら、こうした王族のミイラはひとつとして残っていない。それらは全て侵入して来たスペイン人たちに奪われ、あとかたもなく消滅してしまった。

 スペイン人たちはインカ帝国の独特のミイラ文化を恐れていたためである。なぜならインカの人々にとって、王の存在は神にも等しく絶対的なものであっただけでなく、死後もミイラとなり生きている時と同様の権勢を誇っていたからである。

KEYWORDS:

『特別展ミイラ 「永遠の命」を求めて』
国立科学博物館(東京・上野公園)

 

【開催概要(東京開催 )】
<会期>2019年11月2日(土)~2020年2月24日(月・休)
<会場>国立科学博物館(東京・上野公園)
〒110-8718 東京都台東区上野公園 7-20
<開館時間>午前9時~午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)
※11月3日(日・祝)は午後8時まで、11月4日(月・休)は午後 6 時まで
※入場は各閉館時刻の 30 分前まで
<休館日>月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)および12月28日(土)〜1月1日(水・祝)
※ただし2月17日(月)は開館
※開館時間や休館日等は変更になる場合があります。公式サイト等でご確認ください。
<入場料(税込)>一般・大学生 1,700円、小・中・高校生 600円
※平日アフター3券は会場で平日午後 3 時以降販売 。一般・大学生 1,500円、小・中・高校生500円
※小・中・高校生グループ券は会場で当日、小・中・高校生2名様以上同時入場限定として1人につき500円にて販売 。
※未就学児は無料。 障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名様は無料 。
※本展では、金曜・土曜限定ペア得ナイト券は販売いたしません。
※本展を観覧された方は、同日に限り常設展(地球館・日本館)もご覧いただけます。
※特別チケットも販売 。詳細は公式 サイト へ 。
<主催>国立科学博物館、TBS、日本経済新聞社
<共催>BS TBS、凸版印刷、ローソンエンタテインメント
<後援>TBS ラジオ
<協力>ルフトハンザ カーゴAG
<お問い合わせ>03-5777-8600(ハローダイヤル)03-5814-9898(FAX)
<公式サイト>https://www.tbs.co.jp/miira2019/
<巡回情報>熊本/熊本城ホール、福岡/福岡市博物館、新潟/新潟市立新津美術館、富山/富山県民会館美術館

 

 

『教養としてのミイラ図鑑 ―世界一奇妙な「永遠の命」』
著者:ミイラ学プロジェクト

 

「死」を「永遠の命」として形にしたミイラ。いま、エジプトはもちろん世界各地で、数多くのミイラが発見されており、かつミイラの研究も進んでいる。実は知っているようで知らないミイラの最新の研究結果とこれまでにないインパクトのあるビジュアルで見せたのが本書。高齢化社会の日本ではいま、「死」は誰にとっても身近にして考えざるを得ないこと。「死」を永遠の命の形として表したミイラは私たちに何を語りかけてくるのか? 人気の仏教学者の佐々木閑氏、博物館学者の宮瀧交二氏、文化人類学に精通する著述家田中真知氏の監修と解説とコラムで展開する唯一無二の「中学生から大人まで」楽しめるミイラ学本。

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みいらがくぷろじぇくと

2019年の早春吉日ミイラに魅入られた者たちにより、学問としてさらなる探求研鑽をすべく、自然発生的に設立されたプロジェクト。ミイラを学ぶことは、古今東西の先人たちが遺体を通じて形成してきた、死生観や人生観の核心に近づくことと考える。そしてまた、ミイラ学により人類の埋葬文化の多様性を学ぶことを目的としている。


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  • ミイラ学プロジェクト編(監修佐々木閑・宮瀧交二、田中真知)
  • 2019.07.22