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教員にとって『標準授業時数』見直しは、吉か凶か?

【第13回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■計画時から超過予定である標準授業時数の価値

 今年2月5日、文科相の諮問機関である中央教育審議会(中教審)の初等中等教育課程部会は、学校の教育課程における標準授業時数や発展的な学習の位置づけに関する検討をスタートさせた。教員の過重労働が社会問題化し、働き方改革が求められている現状を考えれば、標準授業時間数を減らす方向で検討されるのが当然だと思うのだが、ことはそう単純には進みそうもない。

 2月5日の初等中等教育課程部会では委員から、「標準授業時数の確保は日本の学校教育の基盤、機会均等を保障しているとも言える。現行の標準授業時数は公教育の観点から維持していくことも大切ではないか」といった意見も出たという。
 2019年4月2日に文科省は、2018年度公立小中学校における教育課程の編制・実施状況調査の結果を公表している。それによれば小学5年生で計画されていた年間総授業時数は、平均で1061.0単位時間だった。標準授業時数は995単位時間なので、これを平均でも大きく上まわっていたことになる。

 さらに調査結果によれば、小学5年生で標準授業時数を上まわる授業を計画していた学校は全体の25.7%に達する。4分の1以上の学校が、標準授業時数を超える授業時数を計画していたのだ。
 ちなみに、2017年度の年間総授業時数の実績は、小学5年生で平均1040.2単位時間である。これを上まわる授業時数が、翌年度には計画されたわけだ。「素直」に解釈するならば、標準授業時数では2018年度に小学5年生での学習内容をこなすことはできないと、多くの学校が判断したことになる。

 実際、学校でやらなければならないことは増えている。2020年度から小学校高学年で英語が教科になるが、それを前に2018年度からは「移行期」として授業時数の確保に努める学校が増えている。総合的な学習の時間を短くして時間を捻出したり、授業時数そのものを増やして確保したりと、英語学習の時間を捻出するために学校は知恵を絞っている。それでも標準授業時数内に収めることができずに、超過計画を立てたことになる。
 もちろん、英語ばかりが年間授業時数の計画を押し上げたわけではない。学習指導要領で教えるべき内容が増えている現状では、標準授業時数内に収めることは難しいからだ。

 2020年度から小学校での新学習指導要領が完全実施されるようになれば、高学年での教科化、中学年では正規教科ではないが「外国語活動」として取り組まなければならない。2018年度の年間総授業時数の予定が標準授業時数を上まわったように、さらに標準授業時数を上まわる授業時間を用意しなくてはこなせないだろう。

 それは、早くから文科省にも分かっていたことでもある。2016年3月14日に文科省は、増える英語の授業時間を捻出するために、夏休みを利用したり、休み時間を短縮して授業時間を捻出する案を学校に示している。つまり、授業時間を増やせといっているわけだ。
 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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