マニュアルなき『オンライン授業』導入は教員現場を混乱させる
第25回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
■「遅延も格差もあってはならない」学校再開への道筋
「『オンライン授業』などとマスコミで華々しく取り上げられていますが、それが可能なのは一部の学校だけではないでしょうか。生徒たちのネット環境や端末所有状況の把握から始めなければならないので、簡単ではありません。それを『学校の努力』に委ねられても…教員に過剰労働を強いることになり、働き方改革に逆行することになります」
これは、ある公立中学校の教員が口にしたリアルな現場の声である。
新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)拡大防止のための緊急事態宣言を、全国を対象地域としながら5月31日まで延長すると政府が発表したのは、5月4日のことだった。その発表記者会見で安倍晋三首相は、「長期戦を覚悟する必要がある」としながらも、学校の休校については、段階的な再開に踏み出す考えを表明した。
安倍首相は、「子どもたちには長期にわたって学校が休みとなり、友だちと会えない、外で充分に遊べないなど、いろいろ辛抱してもらっている。家族にも大変な負担をおかけしている」として、「段階的であっても子どもたちの学校生活を取り戻していく。学校においても新たな日常をつくる取り組みをすすめる」と述べている。
子どもたちのためとはいえ、事態が収束しているわけではない状況で、3密(密閉、密集、密接)を回避しにくい学校の授業再開はリスクをともなうものでしかない。そのため文科省は、先に小学1年生と6年生、そして中学3年生を優先して登校させる「分散登校」の方針を示している。一部の学年だけを登校させることで、3密を回避しようというわけだ。
そうなると、登校できない学年がでてくる。しかも再開については地域の判断に任されているために、分散登校を実現できないところもでてくるだろう。また【北海道・茨城・東京・神奈川・埼玉・千葉・石川・岐阜・愛知・京都・大阪・兵庫・福岡】は特定警戒都道府県に指定されたままなので、他地域よりも再開は厳しい状況にある。
こういった状況においては、地域によって学力格差が生じるのは目に見えている。しかし安倍首相は、それを記者に質問されると、「子どもたちが友だちと一緒に勉強したり遊んだり、貴重な学びの場が失われてしまっているのは、本当に残念。そのなかで子どもたちの学びに著しい遅れが生じることがあってはならない。地域によって大きな格差が生まれることがあってはならない」と答えているのだ。
学校生活を取り戻すのは「段階的」にしかできないことを認めながら、それによって起こる学びの遅れは「生じることがあってはならない」とし、地域ごとの学力格差については「生まれることがあってはならない」と、きっぱり言い切っているのだ。
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