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なぜ『ドラえもん』はアメリカでは人気がないのか?
市民講座で大人気の哲学講師が教える「子育ての哲学」

低成長・人口減の黄昏日本。孤独が当たり前になっていく時代に 幸せに生きるヒントを教える人気哲学講師・加藤博子氏の初著作刊行。

低成長・人口減・高齢化の時代で幸せな人生を送る秘訣とは何か?
幸せな子育てとは何か?

「人間本来の豊かな五感を取り戻すこと。そして五感を磨くこと」
「感覚の可能性を広げれば、人生の幸福感は深まる。その鍵が『想像力』なのです」
『五感の哲学 人生を豊かに生き切るために』(ベスト新書)を刊行した加藤博子氏が指摘する子育てのヒント。

なぜ『ドラえもん』はアメリカでは人気がないのか!?

 日本では、子育てにおいて、どのくらい親が子どもに接触するのがいいのか、何歳くらいまで抱っこしてもいいのか、という問題は、いまだに諸説があります。これは、小児科的な研究に基づいた育児法の問題と捉えられやすいのですが、実は習俗や宗教とかかわる根をもっている面もあるのです。その些細な一例として一九六九年から連載が始まったマンガ『ドラえもん』を挙げたいと思います。

 藤子・F・不二雄の『ドラえもん』は、マンガやアニメとして数多くの国々で人気を博している作品です。しかし実はその広がり方には偏かたよりがあります。世界中に均一に受容されているわけではないのです。アジア諸国では、ほぼ日本と同じようにテレビ番組もぬいぐるみも親しまれています。しかし逆に、『ドラえもん』を拒絶している国々もあるのです。

 たとえばアメリカでは、マンガの版権や放映権は早くに買われていたにもかかわらず、長い間、放映されませんでした。現在は、かなり内容を変更して放映され、ヒットしていると聞いています。

 そもそもアメリカでは、元の『ドラえもん』のような話は、子どもの成長に悪影響を及ぼすとして、放映に反対する意見が出ていたのです。のび太という未熟な子どもが難局に直面すると、すぐにドラえもんに助けてもらえるようでは、子どもの自立心が養えないし、いつまでも依存心を克服できない子に育ってしまうと考える人が、放映を延期させていたようです。すぐに助けてくれる存在は子どもの成長を妨げる恐れがある、自立した子どもを育てたい社会では、そう捉えられてしまうのです。しかし、よく『ドラえもん』を見れば、実はドラえもんが完璧にのび太を助けることはなく、むしろ中途半端な道具を出してきて、混乱が起きるから話が面白くなっていくのですが。

 ともあれ、イタリアとスペイン語圏では『ドラえもん』は以前から人気が高く、中国やインドネシア、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポールでも広く受容されています。パナマ、メキシコ、コロンビア、アルゼンチンでも放映されています。しかし、ドラえもんを容認できない国が存在することは確かです。ドイツではまだ放映されていませんから、あのキャラクターは知られていません。

『ドラえもん』を好むか拒絶するかは、キリスト教のカトリックとプロテスタントで違うのか、あるいはまた、アジア各国やイスラム圏では全面的に好まれているのかどうか等、まだ明確に判定はされていませんが、私はここで、ある仮説を示してみたいと思います。

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