《山陰本線》メイクを落とせば芸能人だと思われない天然キャラの私【女子鉄ひとりたび】6番線
鉄道には夢がある。いや夢しかない。この赤い糸が、あなたにつながりますように。~裕子~
元祖鉄道アイドル、今は「鉄旅タレント」として鉄道をアツく語る、木村裕子が日本各地の魅力的な路線を紹介する“女子鉄ひとりたび”(『女子鉄ひとりたび』著・木村裕子より)。初夏に訪れた山陰の町でふと巻き起こった、笑えるけどちょっとブルーなハプニングを公開しちゃいましょう。
■えッ、このBIGアイドルを知らないの?(裕子ココロの声)
鳥取(とっとり)駅で、東京へ戻るマネージャーを見送った。仕事で地方に来たときは、これがお決まりのパターンとなる。
他のタレントさんは、東京発から東京着までの全行程をマネージャーと一緒に行動するが、私はたいてい現地集合・現地解散。そんな私は自分のことを「放し飼いタレント」と呼ぶ。
そして今回は鳥取駅で放たれた。どのルートで東京に戻ろうか。まずはこの駅周辺を観光してみようかな。
ここ山陰(さんいん)本線は京都駅と山口県の幡生(はたぶ)駅を結ぶ全長673・8キロ に及ぶ日本有数の長大路線で、福知山(ふくちやま)、城崎(きのさき)、鳥取、米子(よなご)、松江、出雲市(いずもし)、長門市(ながとし)などの主要都市を結ぶ。
それなのに路線の大部分は非電化・単線。沿線の人口規模も小さいため、本線とは名乗っているもののどこかローカル然としている。
でもそこが魅力なのだ。
そのローカルっぽい雰囲気が醸す〝そこはかとない哀愁〞は旅人を癒してくれる。人混みに疲れることもなく、近代化がやや遅れた分、国鉄情景や昭和情緒も随所に残されている。
なにより、沿線には良質な観光地が多数あり、特産品も実にバラエティに富んでいる。その観光名所を巡りながら、東京に帰ることにしよう。
まずはホテルにチェックインして荷物を置き、シャワーを浴びて、仕事用の濃いメイクを落とす。これで私のなかの仕事スイッチがオフとなった。よし、乗り鉄開始!
この季節にしか会えないホタルを目指して、若桜(わかさ)鉄道の因幡船岡(いなばふなおか)駅へ向かう。この時期駅周辺では約 3000匹のホタルが舞い、車内から鑑賞することもできる穴場スポットだ。
駅に降りて土手に来てみると、ちょうど「ふなおかほたるまつり」が開催されていた。キャンドルが灯された川沿いを、見たこともない数のホタルが幻想的に飛ぶ。柔らかく光を放ち、線香花火の散り際のようにふわふわと舞って、見物客の全身をぽおっと照らしている。
しばらく佇んで眺めていると、
「すみません、インタビューいいですか?」と声をかけられた。振り返ると、地元テレビ局の取材班だった。
相手は私がタレントであることを知らない。
こういうとき、いつもは丁重にお断りしている。なぜなら、トレードマークの赤制服を着ていないと緊張してしまい、カメラに向かってスラスラと話せないからだ。
この感覚は伝わらないかもしれないが、私にとって制服は、スイッチを切り替える重要な役割も担っている。
それに今はお風呂上りのスッピン状態で、戦闘能力がゼロである。
でも、ここは暗闇の中だし、顔はハッキリ映らないはずだ。こんな経験もいいかもしれないと承諾してみた。
するとその直後にADさんが、煌々(こうこう)とライトを付けて私を照らすではないか。時すでに遅し。
こうして、しどろもどろにスッピンで答える私がテレビで放送された。この話は思い出すと笑えるので、好きな出来事のひとつだ。
(7番線へ続く)
KEYWORDS:
■「女子鉄ひとりたび」出版記念イベント・レポート【その③】
初の本格的な紀行本の発売を記念して、東京・大阪のなんと二カ所!で、豪気に下記の日程でイベントを開催いたしました。
(写真は大阪会場)
開催:東京 2019年12月28日 八重洲ブックセンター本店 8Fイベント会場
大阪 2020年1月13日 旭屋書店なんばCITY店 特設イベントスペース
八重洲ブックセンター本店さま 旭屋書店なんばCITY店さま
みなさん、ありがとうございました!
■水間鉄道に「女子鉄ひとりたび」ヘッドマーク電車が走った!
掲出日程:2020年1月11日~1月20日(10日間)
掲出車両:1003(青ライン/貝塚駅側)
走行日:1月15、16、18、19、20日