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「大阪都構想で行政サービスが下がる」役所が明らかにしたそのメカニズム(藤井聡)

京大教授・藤井聡が「大阪都構想」の欺瞞を暴く!

写真:つのだよしお/アフロ

■最大の論点とは「行政サービスは上がるのか下がるのか」

 大阪都構想の住民投票における最大の論点は、「行政サービスが上がるのか下がるのか?」という一点です。

 推進派は例えば、次の様な派手派手しいポスターを使って「行政サービスが上がる!」と喧伝しています。

https://twitter.com/isshin_n/status/1319206645977628674/photo/1

 しかしこうしたポスターではその理由は明確に書かれていませんが、実態はその逆に、大阪市の解体を通して、行政サービスは「下がる」他ないというのが、一般的な客観分析結果なのです。

そのあたりの詳細は例えばこちらの記事でも論じましたが、

https://news.yahoo.co.jp/articles/2b44190065ad53133e485c8a058c170b7f2cc713

この記事で紹介した「大阪市の四分割に伴う行政サービスの下落」については、平成30年の大阪市役所の人事室もまた、全く同じ分析結果を導きだしています。

 その分析の詳細は、下記の『特別区設置に係る「組織体制(部課別職員数)」に対する人事室意見』(平成30 年12 月6 日)という正式の行政文書(以下、「大阪市・人事室意見書」)で報告されています。

https://satoshi-fujii.com/wp/wp-content/uploads/2020/10/HRDept_opinion.pdf

 この記事では、この行政文書の内容を解説し、「大阪都構想によって大阪市を潰し、四つの独立した特別区を新たにつくり挙げることが、なぜ、行政サービスを引き下げることになるのか」というその、具体的なメカニズムについて、簡潔に解説したいと思います。

(1)大阪市廃止・四分割で、業務量が肥大化してしまう

 当方はこれまで、「都構想」を実現して、(職員を増やさないままに)大阪市を潰して四つの特別区をつくると、仕事量が「肥大化」してしまうので、これまで当たり前にやってきた行政サービスが出来なくなって、確実に行政サービスレベルが落ちるだろうと、繰り返し主張してきました。(参照:『都構想の真実』https://www.amazon.co.jp/dp/4899920725/

 例えば4人家族が一つの家で一緒に暮らしていた時に必要な「家事の総量」と、4人がバラバラに一人暮らしを始めたときの「家事の総量」を比べれば、バラバラな時の方が増えるのは当然です。

 その一方で、今の都構想では、人員は増やさない、ということを決めています。ということは、人員が増えないのに仕事は増えるわけですから、都構想で行政は効率化するどころか、行政がさらに「非効率化」し、行政サービスが低下することは必至だと考えられるわけです。

 以上は、当方の見解だったのですが、この見解と全く同じ事が、「大阪市・人事室意見書」にも明記されているのです。

 まず、この文書の冒頭には、次の様な記述があります。

 「4つの特別区に移行した際、分散化により職員数のスケールデメリットが大きく生じたり……するという恐れがある」

 ここにスケールデメリットとは、スケールメリットの逆です。

 そもそもスケールメリットとは、複数の組織を合併してスケールを大きくすると、行政が効率化するメリットが生じますよ、という話です。都構想はまさに、府と市が統合されるのでこうした効率化が生じるじゃ無いかという話なのですが、この「メカニズム」を踏まえると、一つの大きな行政であった大阪市を四分割すれば、それとは逆に、行政が非効率化するに決まっているじゃ無いかというのが、この文書が言う「スケールデメリット」です。

 つまりこれは、大阪市を分割することで、行政が非効率化する恐れがありますよ、と主張しているわけです。そして、その結果として、この文書の最後には次の様に記載されているのです。

 「特別区設置時点において、業務執行に必要な職員数が不足し、サービス水準の低下を来す恐れがある」

 つまり都構想をやると、仕事が増えて職員不足が生じて、最終的にサービス水準が下がるのだ、ということが書かれているわけです。

次のページ(2)行政文書が明らかにする、行政サービスレベルが下がる項目

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藤井 聡

ふじい さとし

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授(都市社会工学専攻)。京都大学工学部卒、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科研究員、東京工業大学助教授、教授等を経て、2009年より現職。また、11年より京都大学レジリエンス実践ユニット長、12年より18年まで安倍内閣・内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)、18年よりカールスタッド大学客員教授、ならびに『表現者クライテリオン』編集長。文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。専門は公共政策論。著書に『経済レジリエンス宣言』(日本評論社)、『国民所得を80万円増やす経済政策』『「10%消費税」が日本経済を破壊する』『〈凡庸〉という悪魔』(共に晶文社)、『プラグマティズムの作法』(技術評論社)、『社会的ジレンマの処方箋』(ナカニシヤ出版)、『大衆社会の処方箋』『国土学』(共に北樹出版)、『令和日本・再生計画』(小学館新書)、MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実(晶文社)など多数。

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