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何気なく食べている「魚介類」が名字の珍名さん

珍名さん万歳(51)

 

「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」という俳句がある。江戸時代の俳人山口素堂の句で、初夏の季語が詠まれている。

「初鰹」と詠まれていることから、江戸時代の人達も鰹を好んで食べていたことが伺える。実は、魚の名前の名字は多く、「鰹(かつお)」という名字は、全国に3軒(全て京都府)に存在している。「かつお」という名字には、「勝尾」「勝男」「且尾」と書く場合もあり、これらは「勝尾」や「且尾」という地名が存在していることから地名が由来と考えられる。「鰹」という名字も、何らかの理由で「勝尾・勝男・且尾」から変わったことも考えられる。

 一方で、近畿地方には魚の名前の名字が多く、鰯(いわし)・鰡(ぼら)・烏賊(いか)が大阪府に、鯛(たい)・平目(ひらめ)が兵庫県に、鰆(さわら)が京都府に存在していることから、京の都に届ける魚に関係して生まれた名字とも考えられる。全国には、鱸(すずき)や鮫(さめ)・鯨(くじら)・蟹(かに)・蛸(たこ)・貝(かい)・蛤(はまぐり)・海老(えび)・海月(くらげ)・鰻(うなぎ)・鯰(なまず)・鯉(こい)・鱒(ます)など、魚の名前の名字が多く存在する。

 これらの名字の中で、「鱸」は「鈴木(すすき)」という名字から、「蟹」は「可児(かに)」から、「貝」は「甲斐(かい)」から、「蛸」は「多古(たこ)」から、「海老」は「衣斐(えび・いび)」から変わったことが考えられる。鰻や鯰、鯨などの名字は、地名から生まれている。

 普段、何気なく食べている魚介類が名字として存在していることに驚く。

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高信 幸男

たかのぶ ゆきお

名字研究家



1956年、茨城県大子町生まれ。高校の時から名字研究を始め、全国を旅しながら名字の由来やエピソード等を取材している。主な著書に『難読希姓辞典』『名字歳時記』『珍名さん』など。日本家系図学会員、茨城民族学会員、日本作家クラブ会員。


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