「財政破綻」なんて起こらない:中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義第1回
中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義
ところで、日本が財政破綻しないのは何故か、の話に移る前に強調しておきたいのですが、よく言われる「日本の財政赤字は放漫財政のせいだ」というのは誤りです。
「こんなに財政赤字を垂れ流して」「こんなに無駄な金を出して」みたいなことがよく言われますし、政治家の先生方も「厳しく歳出を削減する」とか仰いますし、たまには我々国民も有権者の顔をして「血税を無駄にするな」と急に怒ったりします。たしかに「財政赤字」は大きな事実ですけど、それをもって日本が「放漫財政」とは言えません。
証拠をお見せしましょう。「財政規律重視」の見本として、よくドイツが取り上げられますが。しかし、下図のように、2001年から比べるとドイツでは財政支出が1.5倍に拡大していますが、日本は1.1倍にすぎません。
つまり、憲法で財政規律を規定しているドイツよりも、日本のほうが財政支出を抑制しているのです。こんなに頑張っても財政赤字が拡大しているわけですから、そろそろ無駄な努力をしていることを分かったほうがいい。財政支出をいくら抑制しようが、それと関係なく財政赤字というのは拡大するのです。
■財政破綻とは何か
さて、「日本が財政破綻しない理由」の話に戻ります。
財政破綻とか財政危機とかよく言われますが、そもそも「財政破綻」というのはどういう意味でしょうか? 財政破綻すると何が起こるのでしょうか?
企業が破綻するとその企業は消えることになりますが、財政破綻も同じようなものでしょうか? 例えばアルゼンチンは財政破綻したと言われていますけど、べつにアルゼンチンという国は消えていません。だとすると、国の「財政破綻」とは何でしょうか。
そこで、そもそも財政破綻になると何が起きるのかをおさらいしていきましょう。べつに「中野が言ってる」とか「MMTによると」等とは関係なく、「財政破綻」と言われるのは、一般に以下の三つのいずれかであることは間違いないと思います。
一つ目は単純に、債務不履行。要するに国が「借りた金を返せません」と宣言する、デフォルトですね。
二つ目として、財政危機になると「金利が高騰する」と言われています。金利が跳ね上がると、国は債務の返済で首が回らなくなるというわけです。
三つ目としては、「インフレが止まらなくなる」と言われています。
実際、過去に財政破綻の例に挙げられている国では、この三つのどれか、あるいは複数が起きています。例えばギリシャでは、2011年頃の財政危機のときには、金利がものすごく上がりました。
従って、日本が財政破綻の危機にあるのならば、この三つが起きそうであるか、あるいはすでに起きているはずです。
特に、「金利の高騰」や「インフレが止まらなくなる」という話は、日常生活にも関わる分、多くの方が心配しています。