「財政破綻」なんて起こらない:中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義第1回
中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義
一体どうして、こういうことが起きるんでしょう?
なぜ経済学者たちの予測が大きく外れたのでしょうか?
結論から言うと、「理論が間違っている」からなんです。それでは、どうして日本では、
1、債務不履行
2、金利高騰
3、ハイパーインフレ
が起きていないのか。それを一つずつ検証してみましょう。
(編注:今回は「債務不履行」を中心に取り上げ、「金利高騰」「ハイパーインフレ」については次回以降詳しく議論します)
■自国通貨建て国債が債務不履行になるわけがない
まずは「債務不履行」、いわゆるデフォルトについて検証します。
実は、MMT支持者に限らず、主流派の経済学者や財務省も含めて、「日本がデフォルトしない」という見解では、一致していると思います。
結論から言うと、「変動相場制で自国通貨を発行する政府が、自国通貨建て国債が返済不可能になることはあり得ないし、歴史上もない」のです。
それでは実際にデフォルトしたアルゼンチンはどうなのか。アルゼンチンがデフォルトしたときは、アルゼンチンは「米ドル建ての国債」を返せなくなったのです。アルゼンチンは当然自国で米ドルを発行できないので、返せなくなるということはあり得る。
それならギリシャの場合はどうか。ギリシャに限らずユーロに加盟している国には「自国通貨」がそもそもありません。ユーロは加盟国が勝手に発行することができず、欧州中央銀行が発行していますから、ギリシャも破綻してもおかしくない。
ドイツはよく「健全財政」と言われていますが、じつは、この意味では、ドイツのほうが日本より財政破綻のリスクがあるわけです。なぜなら、ユーロ加盟国のドイツは自国で通貨を発行できないからです。
日本は自国で通貨(日本円)を発行できます。イギリス(英ポンド)もそうですし、アメリカ(米ドル)もそうです。自国通貨を発行している政府において、自国通貨建て国債が債務不履行になって破綻することはない。理由は、言わなくても分かりますよね。「なんで俺がつくった金を、俺が返せなくなるんだよ」という話です。
よく「国民の税金で借金を返さなきゃいけない。国債を償還しなきゃいけない」と言われますが、よく考えてみると、その場合の税金は「円」ですね。国民から税金と称して「円」を取り上げるわけですが、では、国民は、どこからその「円」を得たんでしょうか? その「円」は、誰がつくっているんでしょうか?
それは、究極的には、日本政府です。だから、日本政府は自分たちが国民に与えたもの(円)を、税金で取り返しているというわけです。
「それなら最初から取らないでくれ」と思いますよね。なんで国民から税金を取り上げる必要があるのか。その理由については、また後で説明します。
企業は自国通貨を発行できません。家計もそうです。だから「破綻」する可能性があります。しかし政府は違う。国家と企業とは違うんです。これは、基本中の基本です。
日本政府のデフォルトはあり得ないというのは、私が勝手に言っていることではありません。財務省も認めていることです。
2002年、外国の格付け会社が日本の国債を格下げしました。これに怒り狂った財務省は、格付け会社に公開質問状を出しまして、それがまだ財務省のウェブサイトに残っています。以下です。
https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
一部引用してみましょう。外国格付け会社宛の質問として、
「(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」
とあります。
ということなので、日本の債務不履行・デフォルトというのはあり得ないというのが財務省の見解です。ですから、この話はもういいでしょう。
……いや、ちょっと待ってよ。「いいでしょう」ってことはないだろう。だったらなんで税金取ってるんだよ?という話になるわけですよね。
ここから話が面白くなるわけでして、MMTという理論は、この問題を解き明かしたところが、極めて面白いわけです。
(続きは次回)