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ドイツ装甲師団を支えた「鉄火場の装甲タクシー」の本命となった万能車Sd.Kfz.251

電撃戦を支えたハーフトラックSd.kfz.251④

■実践での運用は。

 では、この「鉄火場の装甲タクシー」は実戦においてどのように運用されたのか。装甲と履帯を備えた半分戦車のようにも思えるハーフトラックだが、装輪トラックよりも不整地踏破性能に優れるためある程度は戦車に追従できるというだけで、実際の運用のされ方は、非装甲の装輪トラックよりは敵の第一線陣地に近づけるという程度のものだった。

 そのため、戦車部隊に追従するハーフトラックに乗車した装甲擲弾兵は敵陣の手前で下車し、戦車に続いて徒歩で前進し戦うというのが、日常的な戦法であった。そしてこのような戦闘時には、ハーフトラックはその搭載機銃で歩兵を掩護したり、当該のハーフトラックを割り当てられている歩兵分隊が、搭載機銃を外して携行し使用することもあった。

 

 装甲師団の装甲擲弾兵連隊は、本来なら本車で完全編成される予定だったが、実際には生産が追い付かず、本車で完全編成されたのは、一部のエリート装甲師団に配属された装甲擲弾兵連隊のみであった。

 基本型の兵員輸送型の基本武装は機関銃2挺。だが、2cm機関砲搭載型、3.7cm対戦車砲搭載型、24口径7.5cm短砲身砲搭載型、7.5cmPak40対戦車砲搭載型、8cm迫撃砲搭載型、ロケット弾のヴルフラーメン40搭載型、火炎放射器搭載型、工兵作業車、通信指揮車、装甲救急車、砲兵観測車、赤外線照射灯搭載型ウーフーなど、きわめて多くの派生型が造られた。生産総数は約15200両といわれる。

 また戦後、チェコスロヴァキアはSd.Kfz.251のエンジンを液冷ガソリンから空冷ディーゼルに変更し、各部に近代化改修を施した派生型のOT-810を1958年から1962年にかけて約1500両生産。自国軍に配備している。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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