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「昌平坂学問所」では何が教えられていたか?

有名中学入試問題で発見する「江戸時代の日本」②豊島岡女子学園

■昌平坂学問所の実際の様子

 では、昌平坂学問所・昌平黌の実際の様子を簡単にですが、見てみましょう。

●使う書籍

 これはもうおわかりですよね。はい、「四書五経」です。特によく誤解されているのが、四書の学ぶ順番です。多くの方が「論語」からやると思っているようですが、実際は一番易しい「大学」から。二宮金次郎が読んでいる書がこれです。そして論語、孟子と進み、最後に一番深淵な中庸に行きつくのです。

●講義の時間

 朝8時からお昼2時まで。

●先生およびスタッフ達

 林大学頭(林家当主で昌平坂学問所総責任者)、祭酒(教授のトップ)、御儒者(教授)5~6人、儒者見習など。

 スタッフは教授方出役頭取3人、教授方出役10~12人、勤番頭2人、勤番20人、下番(かばん)30人などです。

●暑休

 読んで字の如く「夏休み」のことで、毎年あります。教授たちの学問所日記に記されているのですが、江戸時代も夏休みの感覚があったことに驚きです。但し暑休が貰えるのは3千石以上で出仕していない、「寄合」と呼ばれた高禄大身の生徒たちだけ。そういうところが流石、江戸時代なんですよねぇ。

 

●生徒たちの種類

 大別すると3種類。「稽古人(幕臣)、書生(陪臣で書生寮に寄宿)、聴聞人(学籍を待たず公開講釈を聴講するだけの幕臣。庶民含む)」です。
 寄宿する稽古人もいますが、「当主」は出仕があるため寄宿は不許可でした。

●入学方法

 稽古人の仲介による申し込み→儒者の面談→正式に稽古人という流れになります。この二段階申込は「林家塾の入門方式を踏襲」しています。

寄宿稽古人:素読のように基礎課程ではないため入学資格があり、原則個別試験
旗本惣領(嫡子):経書の素読の可否
旗本次男以下、御家人:素読&講釈(口頭で経書の一説の要旨を説明する)

●課業(授業)の種類

 素読:初学者を対象とするもので、日々行われました。
 他にも講釈、会読、輪講などがあり、日にちを決めた定期的なものなど6種類があります。稽古人の種類ごとに、学習形態別に課業は行われたもので、いずれも漢学(経・史・詩文)の学習書を定め、巻頭から巻尾まで一通り講究する方式でした。

 そして浪人や庶民にも公開して毎日行われた「仰高門日講」など、公開課業も2種類ありました。

●試業(試験)の種類

 昌平坂学問所の場合は幕臣の子供時代、基礎学力や廃嫡するか否かの目安にもした「素読吟味」、出仕採用試験の「学問吟味」の2大試験に代表されますが、普段の試業は課業同様、やはり日にちを決めるなど様々に行われています。

 特に日常的なものが、3・8の日に行われた「三八朝試(朝試業)」で、理解度を試す口頭試験でした。略して「試験、試検」とも言い、現代と同じ漢字・言い方をしていことがわかります。

 以上、駆け足でざっと見てきましたが如何だったでしょうか。
「素読吟味」「学問吟味」を始めとする各課業・試業についてはまた詳しく書くとして、こういう感じの学問所だったのかと、身近に感じて頂ければと思います。

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瀧島 有

たきしま あり

江戸文化歴史研究家

江戸文化歴史研究家。学校や教科書が教えない、江戸の町の武家・庶民の真実の姿、風俗や文化、食べ物などを研究する傍ら、江戸文化勉強会「平成江戸幕府」を主宰。フェリス女学院大学、内閣府クールジャパン・アドバイザリーボード・メンバーなどを経て、法政大学文学部史学科に在学中。著書に『あり先生の名門中学入試問題から読み解く江戸時代』など。


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