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義務教育の「義務」とは何への義務か(後編)

移民にこそ義務教育を!

■移民にこそ義務教育を!

 とはいえ、わが国に定住する外国人の数が急増するであろうことを思えば、
これは由々しき事態と評さねばなりません。

 そのような状況のもと、「日本」という国のアイデンティティを維持しよう
と思えば、移民の子どもにこそ積極的に義務教育を受けさせ、「国民」として
の意識を持たせる必要がある。

 移民によってつくられた国であるアメリカでは、星条旗に向かって忠誠を誓
う「プレッジ・オブ・アリージャンス」という儀礼が、学校でもよく行われま
す。

 旗に顔を向けて立ち、左胸(=心臓)の上に右手を置いて、国旗と国家への
忠誠を宣言するのですが、これに類することをやらねばならないのですよ。

 しかるに戦後のわが国では、おなじみ平和主義のせいで、「国家への忠誠」
という概念自体が、何やら危険なものであるかのごとく思われている。

 義務教育の「義務」とは国家にたいする義務だという点すら、ちゃんと認識
されていないのが実情ではありませんか。

 要するに日本人の子どもにすら、「国民」としての意識を持たせようとして
いない。

 ならば外国籍の子どもにたいし、日本への忠誠を誓わせるなど、文科省には
思いもよらないでしょう。

 毎日新聞の記事には、愛知淑徳大学の小島祥美准教授によるコメントが添え
られていますが、こちらも「外国籍の就学不明児童1.6万人」という結果に
ついて、学ぶ権利が守られていないことばかり問題にしていました。

 その点にしたって、問題でないとは言いませんよ。

 けれども真の問題は、外国籍児童の就学をめぐる現状を放置したままでは
、「日本人でないうえ、国民としての意識も持たない子ども」が増加の一途を
たどること。

 就学年齢(6〜14歳)の子どもだって、最短で6年、最長でも14年で成
人するのですぞ。

 これで外国人地方参政権が実現したら、どうなると思いますか?

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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