義務教育の「義務」とは何への義務か(後編) |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

義務教育の「義務」とは何への義務か(後編)

移民にこそ義務教育を!

■政府の巨大な現実逃避

 ところが政府は、入管法改正で入ってくる外国人について、移民ではないと
いう姿勢を取りつづけている。

 永住を含めた長期滞在が可能になるにもかかわらず、です。

「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12ヶ月間当該国に居住する
者」というのが、移民に関する国際的な定義。

 外国人労働力は、これをきっちり満たします。

 なのになぜ、移民ではないと言い張るのか?

 本当のことを認めると都合が悪いから、無理やり移民ではないことにしてい
る、そう受け取られても抗弁できた義理ではありません。

 だが「移民」が入ってくるわけではないとすれば、「移民流入に伴う問題」
も起こるはずがない。

 よって、それらの問題に対処する必要もないという理屈になります。

 早い話、現実から目をそむけたまま国家解体への道を歩む次第。

 戦後日本の平和主義の本質が「国家の否定」であることを認識し、そこから
脱却しないかぎり、この流れは止められません。

 国家百年の計たる教育、とくに義務教育が揺らいでいるのは、国家そのもの
が揺らいでいる兆しなのです。

KEYWORDS:

オススメ記事

佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路
  • 佐藤 健志
  • 2018.09.15