受験シーズン真っ只中!「受験の神」菅原道真に秘められた真実とは!?
「学問の神様」は、もとは災いをもたらす悪神だった!?
■受験の神さま・菅原道真は実は怨霊だった!?
受験・学問の神として知られ、親しみ深く頼りになる庶民的な善神の「天神(てんじん)さま」になる前の菅原道真(八四五〜九〇三)は、強力な祟りをなす怨霊でした。崇徳上皇、平将門と並び「日本三大怨霊」と称されているのです。
平安時代以降、怨霊の怒りを慰撫(いぶ)して祟りを鎮め、平穏な和魂(善神)として祀る御霊信仰が盛んになりますが、その信仰で御霊とされた人物は多くが政治的失脚者です。道真も同様に権力闘争の敗者となった過去を持ちます。
道真が活躍した平安時代は、藤原氏の全盛時代です。稀代(きたい)の秀才の道真は、学識、政治手腕ともにすぐれていましたから、出世街道をまっしぐらに突っ走ります。そして、醍醐(だいご)天皇の父・宇多(うだ)天皇に重用されて右大臣に昇進し、右大将も兼任して、従二位(じゅにい)まで昇進しました。
当然、彼の異例の出世は、藤原氏や他の貴族たちの反感と不興を買いました。その結果、後ろ盾の宇多天皇が亡くなると、対立していた切れ者の左大臣の藤原時平(ときひら)の謀略によって、大宰府(だざいふ)(福岡県)に左遷され、子ども四名も各地に配流されてしまいました。
成功者から一気に政争の敗者となった道真は、憤懣やるかたなく幽閉生活を過ごし、左遷からわずか二年後、延喜(えんぎ)三年(九〇三)に憤死したのです。
道真の場合、それだけで怨霊化したわけではありません。
道真の死後、間を置かずに人知を超えた前例のない災厄が頻発し、それが冤罪事件の関係者とその周辺だけでなく、広く民衆一般にも及びました。
そして、こうした災厄の原因が、恨みを持ちながら死んだ道真の霊と結びつけられ、その怨霊がこの世で復讐しているのだと考えられたのです。ここに怨霊としての道真の誕生です。
KEYWORDS:
『本当は怖い日本の神さま』
著者:戸部 民夫
神話の神さまのもう一つの顔、日本史を騒がせた怨霊神、神さまになった妖怪たち、 民話・伝説でおなじみの悪神などをテーマに、エピソードをふんだんに織り交ぜ、ドラマのある神さまの裏の顔をじっくりと紹介。
「はじめに」より
目次
第1章 神話の神さまのもう一つの顔
伊邪那美命いざなみのみこと──「神々の母」のもう一つの顔は死者の国の女王
素盞嗚尊すさのおのみこと──「諸悪の元祖」とされる荒ぶる神の代表格
天照大神あまてらすおおみかみ──「日本の総氏神」のパワー源は祟り神のエネルギー
大国主命おおくにぬしのみこと──「あの世」の暗黒面にも通じる鬼神のボス
迦具土神かぐつちのかみ──母の命を奪って誕生した「火の神」の恐怖
禍津日神まがつひのかみ──「浄化」の善神の本性は、穢れから生じた災厄そのもの
岩長姫命いわながひめのみこと──醜さゆえの「山の神」の嫉妬が祟りをもたらす
第2章 日本史を騒がせた怨霊神
崇徳上皇すとくじょうこう──「日本の大魔王」になると誓った日本史上最凶の祟り神
菅原道真すがわらのみちざね──「学問の神様」は、もとは災いをもたらす悪神だった
平将門たいらのまさかど──朝廷に反逆し東国の自立を図った英雄の怨念
早良親王さわらしんのう──桓武天皇を恐怖に陥れ、平安京への遷都を促す
藤原広嗣ふじわらのひろつぐ──荒ぶる雷神と化して怨敵を祟り殺す
第3章 神さまになった妖怪たち
天探女あめのさぐめ──記紀神話の中で唯一呼び捨ての嘘つき魔女
物ものの怪け──多くの物語に登場する妖怪だが、神聖な一面も
夜刀神やとのかみ──姿を見ただけで一家・一族が根絶やしに
船霊様ふなだまさま──漁師たちの船の守り神は嫉妬深い女神
天狗てんぐ──強力な神通力で天変地異や戦争を引き起こす
第4章 民話・伝説でおなじみの悪神
河童かっぱ──病気を流行らせ、子どもを殺す魔性の持ち主
雷神らいじん──日本神話に最初に現れる醜く恐ろしい怪物
風神ふうじん──死霊が「魔風」となって不幸を運ぶ
山姥やまんば──聖性と魔性をあわせ持つ山の悪神
厄病神やくびょうがみ──異界からの侵入者がもたらす病気と災難
第5章 可愛い動物の霊が祟る
犬神いぬがみ──主人の命じるままに他人に祟りなす
猫神ねこがみ──なぜ猫を殺すと取り憑かれるのか
狐神きつねがみ──「霊獣」としての狐が呪われた獣になった理由
狸神たぬきがみ──ずる賢さはないが、残忍さでは群を抜く邪鬼
猿神さるがみ──生贄を要求したり、激しく祟る「山の怪物」
牛神うしがみ──農業を守る聖獣だが、妖怪化して「牛鬼」となる
蛇神へびがみ──死霊と結びつき、他家にも害をなす悪の権化
※巻末に〈怖い神さま〉ゆかりの社寺・霊場ガイドも掲載