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「或る列車」で行く大村線・長崎本線の旅

“動くリビングルーム”でスイーツを楽しむ

 先日、JRKYUSHU SWEET TRAIN「或る列車」に乗る機会があった。車内で出される食事の詳細については、別のところで詳しく紹介したので、ここでは、佐世保駅から長崎駅までの車窓についてご案内したい。

「或る列車」喜々津にて

 「或る列車」は、駅の窓口で気楽に指定券が買える列車ではない。この列車に乗るツアーに申し込む必要がある特別の列車なのだ。乗車時間は2時間20分ほどと、それほど長くはないけれど、豪華列車「ななつ星in九州」に匹敵するほどの特別感たっぷりの車両2両から編成される。「ななつ星」同様、水戸岡鋭治氏のデザインで列車とは思えない雰囲気の優雅な空間となっている。

「或る列車」1号車車内

車内で出された軽食

 「或る列車」には、普通の乗車券はなく、専用ファイルに入った乗車案内がその代わりだ。それを係員に見せて改札を入る。列車が発車する6番乗り場には赤い絨毯が敷かれ、アテンダントさんに案内されて優雅な気分で車内に入った。

 「或る列車」は、JR最西端の駅佐世保を発車すると、山に囲まれた市街地を南下する。天然の良港をもつ街は、その地形の特色として山と海に挟まれた細長い市街地が続くのである。

新型車両YC1系。早岐にて

 有田方面から延びてきた佐世保線の線路と合流すると早岐に到着。8分程停車する。駅に隣接して車両基地があり、発車後、新しい車両の脇を通り過ぎた。蓄電池搭載型ディーゼルエレクトリック車両YC1系である。「やさしくて力持ち」の新型車両とのこと。早く乗ってみたいものだ。

 やがて右手に早岐瀬戸(はいきせと)が見えてきた。川みたいに見えるが、実は細長い海峡で対岸は針尾島である。しばらくすると瀬戸の対岸にヨーロッパ風の豪壮な宮殿のような建物が現われる。テーマパーク「ハウステンボス」のホテルなのだ。博多からやって来る特急列車の終点となるハウステンボス駅はあっさりと通過。しばらくは内陸部を走り、車窓の見どころは、しばらくなさそうなので、食事に専念しよう。まずは軽食に手を付け、それが済んだ頃を見計らって、アテンダントさんがスイーツとドリンクを運んでくる。

ハウステンボスのホテル

 第二次大戦後、海外からの引揚者や復員者が大挙乗車した専用列車の始発駅だったことで知られる南風崎(はえのさき)を通り過ぎる。小串郷あたりで海が見え始め、川棚を過ぎると大村湾に沿って海岸線ギリギリのところを走る。ところどころで海から遠ざかるところはあるものの、静かな湾の様子が手に取るように分かる。

大村湾の車窓

 飲食がメインの列車であるから展望席はないけれど、居間のようなインテリアに合わせて造られた格子状の枠で囲まれた窓から景色を眺めることができる。リビングルームが動いているような感じで、外は大村湾の風景が広がっている。席を立ってステンドグラスのはめ込まれたドアを見てみる。よく観察すると背後に海が映り、こちらも面白い車窓となる。

ステンドグラス越しに見える大村湾
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