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跳び箱に引かれた3本の線。そこにあった「学びを面白くする」ヒント

生徒たちが主体的に授業に参加し、思考する重要性

■沈黙に耐えることが子どものためになる

「6年生の音楽発表会の練習を見に行って、『もうちょっと、こうしたらどう?』って私がアドバイスしたんですね。そうしたら担任の教員は、『じゃ、みんなで話し合ってみて』って子どもたちに振ったんです。すぐには子どもたちから意見はでてきませんよ。それでも担任はジッと待ってる。私のほうが、『時間がないのに大丈夫かしら』ってヤキモキしましたよ」

 すぐに意見が出てこないのは、子どもたちが考えているからだ。そこで教員が「こういうことでしょう」とか「だから、こうしなさい」と言ってしまえば、子どもたちは考えることを止めてしまう。自ら考え、学ぼうという姿勢は育たない。それが従来の学校では、当然のように行われていたのだ。

「私をふくめて、教員は沈黙に耐えられないんです。教室がシーンとしている状況は苦痛なんですよ。自分が引っ張りたくて仕方なくなるんです」

 と言って、高橋校長は笑った。しかし「学びは面白い!」の本質を理解しはじめている教員は、耐えられる。耐えることが、ほんとうに子どもたちのためになっていることを理解できているからだ。

 三好教育長がすすめる「学びは面白い!」に戸惑っている教員も少なくはい。しかし、その本質を理解し、実践している教員がいることも事実である。

 そういう教員が増えていくことで、福山市の教育は確実に変わっていくはずだ。そういう教員をどう増やしていくかが三好教育長の課題であり、そのための努力が続けられている。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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